この考え方は全くの初級編で、自分の自宅の家賃を会社の経費で落とすことは可能である。逆に、『いや、それは無理だ』という人間は、おそらく自分の会社が、会社として存在していて、そこに自宅から通っていて、という常識の中に生きている人だ。周りの人もそういう人であふれているのだろう。
だから、
『自宅を会社の経費で落とすことはできないよ。経費で落とせるのは、職場だけ。だから作業場とか、オフィスビルとか、そういうことになるから自宅は無理に決まってるだろ。』
という考え方を持っているというわけだ。
確かにその話は一理ある。だが、『一理』だけだ。全部が正解ではない。何しろ、ノマド、フリーランス、SOHOという概念があるわけだ。それを考えただけでも、もう『職場=自宅』という発想が浮かび上がってくるわけである。
それに、漫画家や作家などはどうだ。自宅の一室で仕事をするのではないのか。そこまで考えれば、もう『自宅の家賃は経費で落ちる』という話の蓋然性がハッキリとして来るのである。
だが確かに彼らのような人の意見も『一理』はある。つまり、
『家賃や光熱費の全部を経費で落とせるの?だって、職場は一室だけで、後の部屋ではゲームやSEXをしたりしてるんでしょ?それは妙じゃないかなあ。会社なら、オフィスは全て事業の為に存在しているわけだから、逆にそうなると不公平のような気がするけどなあ。』
という疑問が出て来るわけである。その為、『自宅の家賃を経費で落とす』ためには、ルールが必要になる。
- 1.会社と社長との間で契約書を交わす
通常の賃貸契約と同じ契約を締結する。
- 2.金額は合理的に算定する
自宅全体を24時間フル使用することはない。使用部分の面積や使用時間等、合理的な基準で業務上の使用割合を定め、これを自宅の家賃に乗じた金額として算定することが必要。
- 3.家賃は実際に資金を移動させる
会社の支払い家賃が帳簿上だけの操作だと実態のないものとされてしまうので、毎月実際に家賃の支払いをすることが必要。
つまり、自宅の家賃や水道光熱費を経費で落とす際は、『全額は無理』ということを覚えておかなければならないということだ。 半分程度、という基準を覚えておくといいだろう。
また、自宅が『持ち家 』だった場合注意が必要なのは、会社からの家賃は不動産収入となり、所得税が増加するということ。ただし、借家の場合はない。
借家の場倍は、今借りている賃貸住宅を会社が借り上げることにして、自分は会社が借りている住宅に住むという形を取る。この場合、家賃の全額を会社から出してもらっていれば家賃分は自分の給料とされている。
最低でも家賃の30%程度を会社に支払っていれば、給料とはみなされず福利厚生費として処理できる。つまり家賃の7割なら会社の経費(これが従業員なら15%だけ払えばいい)。この制度は従業員にとっても節税となるので給料をその分下げてでも会社から家賃を出してもらった方が得である。
給料が30万円の所得税と、給料が15万円の所得税は違う。つまり、給料を30万円にして従業員に渡すと、従業員は30万円分の所得税を毎回支払う必要があるが、15万円にし、地代家賃や水道光熱費を会社が負担する形を取れば、所得税や社会保険料をを多く支払う必要がなくなってくるのである。
それで結果的に従業員の手取りは同じになるわけだから、このあたりは『携帯電話の料金プランの最適化』同様、何とも馬鹿げた話である。決して、その最適化をした方が『賢い』という見解にはならない。馬鹿げている。