順張りではなく逆張りが出来なければ投資家とは言えない
多くの投資家が、『買い』のみでトレードするという事実がある。なぜなら、それが人間心理に従順だからだ。流れていく方向に、流される。皆がいる方向が、安全である。その様に考えるようになったのは、それなりに理由がある。
例えば、テレビ番組『ミリオネア』のライフラインは、『テレフォン、オーディエンス、50:50』があったが、そのうち、最も参考になるのは、往々にして『オーディエンス』だった。つまり、会場にいるみんなの意見だ。それが実に高い確率で、正解を導き出すヒントとなるのである。例えば、
A=10%、B=15%、C=20%、D=55%
明らかに回答Dが最も高い賛同を得ているわけだが、事実、このようにしてハッキリと数字が導き出された場合は、毎回のようにこのオーディエンスの正解率は高かった。
これらの事実を考えた時、この様にして人間は長い人生の中、皆がいる場所に移動すれば、命が助かる、というような経験をたくさん積んできて、それらの選択と決定がDNAに沁みついているのだと推測するのは容易である。そういう事実も相まって、株式投資においても多くの投資家が、『買い』のみでトレードするという事実が存在しているのである。
多くの人は株が上がって欲しいと期待している。それが『正当な流れ』だと思うからだ。一昨日と比べて昨日、昨日と比べて今日と、徐々に上がってきているのだから、今回も同じように上がる。そう思い込んでいるのである。
だが、株は上がるときもあれば下がるときもある。この淡い期待があり、集団に意志を依存するところがあるから空売りができない。つまり順張りしかできない。逆張りという行為は、人間的に罪悪感を覚えるからだ。皆と違う行動や逆らった行動は不安になる。逆に、皆と同じ行動や従順な行動は安心する。
相場で勝つためにとくに重要なのはこの逆張りなのだ。逆張りとは大多数の人達とは逆のことをするやり方。皆が買いに動いているときは、売りを考える。売りなら買い。株価が上がる一方だから買いだと考えるのは普通だ。その波に乗りたい。だが、そこが天井だったということがある。往々にしてある。勇気を出し、いかに思い切りよく売るかが勝負。逆張りを実践するには度胸が欠かせない。
株は戦と同じだ。買う人と売る人が戦って、買い方が多ければ株価は上がり、売り方が多ければ株価は下がる。株の世界でも今買い方が優勢なのか、売り方なのか、その勢いはどのくらいかを考えなければならない。世の中の人全部が相場に対して強気になっているようなときは、相場全体が天井に近づいているシグナルだ。そういうときは、形勢は下げ基調に入ると判断すべきなのに、多くの人は上げ基調だと見る。そして持ち続けたり買ったりして、負けてしまう。だが、逆を行く人は勝つ。下げ相場を呼んで勝つ。そこが天井だと察知して売るからだ。空売りというのは、株価が下がれば儲かるというもの。つまり、慣習や人間の性質に逆らえるような、人とは違う発想をする人間が空売りを支配する。