会社を自己破産させるためには、取締役全員の意見が一致しなければいけないの?
答えは、Noです。
代表取締役、あるいはそれ以外の取締役がその会社を代表して破産の申し立てをすることができるようになっています。
個人と違って会社の自己破産となると、自分一人の判断では出来ないからね!取締役もいっぱいいたりして、誰の権限で出来るのかとか、そういうことがわからないよね!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
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『準自己破産宣告申立』という制度がある
普通の会社では、会社を自己破産させるためには、取締役会での過半数決議が必要になりますが、破産をしようとしても、取締役全員の意見が一致しなければそれを遂行することはできないのでしょうか。
答えは、Noです。
代表取締役、あるいはそれ以外の取締役がその会社を代表して破産の申し立てをすることができるようになっています。つまり、取締役会を開催できない場合や、取締役会内部で意見の対立や認識の不一致があって、会社の破産申立について取締役会で全員一致の決議ができない場合でも、申立をすることができるというわけです。
それを『
』と言います。
破産法19条にはこうあります。
『次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。』※破産法(第十九条)
- 1.一般社団法人又は一般財団法人 理事
- 2.株式会社又は相互会社 取締役
- 3.合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員
取締役会を開催できなかったり、取締役の間で意見が合わないということがあれば、こういった申し立ての流れになることがあるわけです。定款に特別な定めがない限り、株主総会での決議も必要ありません。
準自己破産と自己破産とがあって、準自己破産は、会社の破産申立について取締役会で全員一致の決議ができない場合なんかに、適用されるわけだだね!
ぴよぴよ(全員一致じゃなくてもいいんすね)!
普通の会社とは
『ここで言う普通の会社』というのはかなり大雑把な言い方をしましたが、『取締役会設置会社』のことです。会社には、
- 『取締役会設置会』
- 『非取締役会設置会』
の2つがります。『取締役会設置会』とは、取締役3名以上からなる取締役会を設置している会社のことであり、『非取締役会設置会』とは、取締役会を設置していない会社のことです。
前述した、『取締役会での過半数決議が必要となる(会社法362条)』というのは『取締役会設置会社』のケースです。『非取締役会設置会』の場合は、『取締役の過半数の同意が必要になる(会社法348条)』ということになります。
まあ、現代では株式会社も
し、一人いれば成り立つので、『普通の会社』という概念も変わってきているかもしれません。以前は、株式会社を設立するためには、こういう条件が必要でした。
- 取締役最低3人以上
- 監査役を最低1人以上
- 1,000万円の資本金
それが平成18年に新会社法が出来て以来、変わったんですね。ですから、現代に『非取締役会設置会』を『普通の会社ではない』と考えるのは間違っているかもしれません。
非取締役会設置会社とかって難しい言い方をするとわかりにくいけど、取締役が大勢いるかいないかってことだね!僕の会社は取締役はいなくて社長の僕と社員だけだったから、非取締役会設置会社ってことになるよ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
支払不能又は債務超過になければ、破産の申請をすることはできない
もちろん、破産が認められるか認められないかということは、裁判所が厳正な判断をすることになります。
破産法第1条にはこうあります。
『この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。』※破産法(第一条)
つまり、支払不能又は債務超過にあることがわかればいいのですが、そうじゃないのに破産の申請をしても、それが通る確率は極めて低いと言えます。
ですから、『取締役全員の意見が一致、不一致』とかそういう以前の話で、会社自体が支払不能又は債務超過になければ、そもそも破産の申請をすることはできないということです。
まあこれは当然だね!逆に、取締役の意見が全員一致したところで、その会社が支払不能、債務超過になってなければ自己破産は通らない!自己破産をする必要がないからね!
ぴよぴよ(たしかに)!
準自己破産宣告申立と準自己破産宣告申立のちがい
さて、『準』というぐらいですから、それがついていない言葉があるということです。それを、『
』と言います。自己破産宣告申立とは、『取締役全員一致の取締役会議事録を添付して申立をする場合』のことを言います。つまり、
- 準自己破産宣告申立=取締役一人が申し立てをする
- 自己破産宣告申立=取締役が全員一致して申し立てをする
ということですね。どんな場面でも全員の意見が一致することが最善な結果だとは思いますが、なかなかそろわないのが人間の意見です。意見がそう簡単に一致していたら、この世界で争いは起こることはありません。
また、この『自己破産宣告申立』をする際は、取締役が一人で行える『準自己破産』とは違って、話し合いをする為に『取締役会』を開催するわけですが、それが開催できなくても、『みなし決議』をすることができます。
『みなし決議』とは簡単に言うと、『取締役会』を開催しなくても、全取締役の破産申立についての同意書を作成すれば、
書類を作成することができるということです。
会社法370条にはこうあります。
『取締役会の決議の目的事項について取締役の全員が書面で同意したときには、可決の決議があったものとみなすことができる』※会社法(370条)
ただし、これを実行するためには、あらかじめ定款に記載しておくことが必要です。まあ、会議をしようがしまいが、どちらにせよ結果的には『話し合いの結果出たみんなの答え』を書類にまとめて、それを裁判所に提出するわけですから、書類があれば後の細かい部分はあまり大きな問題ではない、ということですね。もちろんその書類作成が『正当に行われるため』に、取締役会を開くのですが。
取締役一人の場合は、準自己破産、全員一致の場合は自己破産だね!ここからは、その破産について、取締役たちの意見がどれだけ一致しているかっていうことがわかるね!
ぴよぴよ(うーむ)!
各破産申し立てのポイント
また、以下のポイントを押さえておく必要があります。
- 自己破産宣告申立=破産原因の事実を申立書で説明する必要はない。
- 準自己破産宣告申立=破産原因の事実を申立書で説明する必要がある。
一応法的にはそういった規律があります。しかし、どちらにせよその破産する原因を申立書で『説明しない』という人はあまりいないでしょう。普通に考えれば、
があるから破産を申請するわけですからね。
『準自己破産宣告申立』だけが説明する義務があるのは、やはり全員一致ではないということで、その信憑性を正確に把握する必要があるからです。
ちなみに、準自己破産宣告申立は裁判所に払う予納金等の費用が高額になることがあります。しかしだからといって、それらの破産手続きにかかる費用を自己負担しなければならないということはありません。
こう考えると、準自己破産の方がその手続きにおいて、何かと不便な思いをすることになるね!説明したり、お金がかかったり。費用と時間が必要以上にかかるわけだから!
ぴよぴよ(全員一致よりは信憑性が低いっすからね)!
破産手続開始申立書に添付する必要書類・提出書類
裁判所は、法人・会社の破産手続開始申立書だけでは、破産する法人・会社の負債や資産等を知ることができません。支払不能又は債務超過があるから破産をするわけですから、その事実を決定的に証明するために、様々な書類が必要になります。
必要書類
- 法人・会社の商業登記簿謄本
- 取締役会議事録(各取締役の同意書)
- 委任状
- 債権者一覧表
- 報告書(または陳述書)および財産目録
- 申立書・報告書を疎明するための各種資料
- 決算書・決算報告書・確定申告書
- 預金・貯金通帳の写し
- 従業員名簿・賃金台帳等
- 不動産を所有している場合(不動産登記簿・査定書等)
- 不動産を賃借している場合(賃貸借契約書等)
- 自動車・車両を所有している場合(自動車検査証・査定書等)
- 売掛金や未収金がある場合(契約書など)
- その他疎明資料
書類の不備があれば手続きは滞ります。スムーズな手続きのために、弁護士等の専門家に依頼することも検討しましょう。
個人で考えても大変だからね!法人になると更に複雑化するから、弁護士に依頼した方が早いと思うよ!費用はその分かかるけど、個人でも弁護士に依頼することが相場だからね!
ぴよぴよ(会社の場合は余計弁護士が必要かもしれないっすね)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!