特定調停スキームってなに?
『特定調停スキーム』とは、概ね『年商20億円以下、負債総額10億円以下の企業』の中小企業の再生を応援する対策として策定されたものです。
これは法的再生ではなく、私的再生というところがポイントで、民事再生など法的再生手続を利用すれば、『倒産』というレッテルを貼られることによって事業価値が下がり、再生が難しくなります。しかし、私的再生であれば非公開ですので、そういった信用へのダメージを防げるメリットがあるんですね。
たしかに特定調停スキームによって、非公開で再生できれば有難いね!会社っていうのはちょっとしたことで信頼に傷がついたりするからね!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
特定調停とは個人だけでなく法人も行える
特定調停とは、個人だけでなく法人も行うことができます。
裁判所の公式ホームページにはこうあります。
特定調停というのは,債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生を図るため,特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を行うことを目的とする手続です。
特定調停手続は,経済的に破綻するおそれのある債務者であれば,法人か個人か,あるいは事業者か否かを問わず幅広く利用することができます。そして,合意が成立し,これを調書に記載したときは,その記載は確定判決と同一の効力がありますので,債務者としては,これに従って弁済すればよく,それ以上の取立てを受けることはありません。
特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律第2条にもこうあります。
この法律において「特定債務者」とは、金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人をいう。
つまり、
- 支払不能に陥るおそれのあるもの
- 事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの
- 債務超過に陥るおそれのある法人
ということですね。自己破産の場合は『支払不能になった者』ですが、特定調停の場合は、 『支払不能に陥るおそれのある者』、『債務超過に陥る恐れのある法人』ということになります。
『支払不能に陥るおそれのある者』と『債務超過に陥る恐れのある法人』だから、個人も法人も特定調停ができるんだね!個人だけじゃないんだ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
中小企業の再生を応援する『特定調停スキーム』
その法人の特定調停ですが、中小企業の再生を応援する対策として、『特定調停スキーム』というものが策定されました。
日弁連のホームページにはこうあります。
日弁連では、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(通称:中小企業金融円滑化法)が平成25年3月末日に終了したことへの対応策として、主に中規模以下の中小企業の事業再生を支援するため、最高裁判所、経済産業省中小企業庁と協議し、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(平成11年12月17日法律第158号)に基づく特定調停制度を活用するスキーム(以下「本特定調停スキーム」という。)を策定し、平成25年12月から「本特定調停スキーム」の運用が開始されています。
本特定調停スキームは、民事再生等の法的再生手続によれば事業価値の毀損が生じて再生が困難となる中小企業について、弁護士が、税理士、公認会計士、中小企業診断士等の専門家と協力して再生計画案を策定し、金融機関である債権者と事前調整を行った上、合意の見込みがある事案について特定調停手続を経ることにより、一定の要件の下で債務免除に伴う税務処理等を実現し、その事業再生を推進しようというものです。
特定調停スキームの対象となる債務者の事業規模は、概ね『年商20億円以下、負債総額10億円以下の企業』です。これは法的再生ではなく、私的再生というところがポイントで、民事再生など法的再生手続を利用すれば、『倒産』というレッテルを貼られることによって事業価値が下がり、再生が難しくなります。しかし、私的再生であれば非公開ですので、そういった信用へのダメージを防げるメリットがあるんですね。
しかも、弁護士費用を3分の2まで補助してもらうことができ、手続き全体が終わるのも半年から1年ほどと、かなりお手軽になっていることも特徴です。法人の債務整理となると、費用は個人と比べて高くなりますし、時間もかかりますからね。
私的再生であり、非公開。弁護士費用が3分の1で済み、手続きの時間も法人の割に短い!いやあ、中小企業にとっては有難い制度だね!
ぴよぴよ(たしかに)!
申し立てをする裁判所と弁護士の介入
申し立てをするのは、個人の場合の特定調停同様、債権者の金融機関の住所がある地区を管轄している簡易裁判所です。
法人と個人の特定調停の違いの一つは、『弁護士の介入』です。個人の場合、弁護士を間に入れないことが特徴です。それによって費用を抑えられるのがメリットでもあります。
しかし、特定調停スキームではほとんどの場合、弁護士が代理人となります。特定調停スキームの手続きは『認定弁護士』が受任していて、手続き費用の一部は国から補助が受けられます。国が『支援認定機関』として認定した弁護士に限られているんですね。
認定弁護士
認定弁護士は中小企業の経営等を支援するための専門知識や実務経験が一定レベル以上であることが認められた者です。
しかし先ほども言った様に弁護士費用を3分の2まで補助してもらうことができるわけですから安心です。上限は200万円まで認められています。
認定司法書士は140万円までの債務なら代理人として対応できたり、認定弁護士の場合は特定調停スキームに対応できたり、やっぱりエリートはいい仕事ができるね!
ぴよぴよ(個人タクシーみたいなもんすね)!
事前調整及び交渉について
そして個人と法人の違いのもう一つに、『事前調整及び交渉』があります。個人の場合、下記の記事に書いた様に、債権者と顔を合わせることなく交渉をすることが可能です。
しかし、法人の特定調停では申し立て前に債権者と綿密に企業再建などについて協議していくこととなります。そして、こうした調整・交渉がどれだけしっかり行われているかが、法人の特定調停を行った後に影響してくるのです。ここで話し合いを適当にしてしまえば、後でトラブルになることもあります。
例えば、自己破産における管財事件も、手続きの簡易・迅速化を図るために『少額管財』というものが設けられています。この少額管財にすると、管財事件手続きによってかかる時間を大幅に短縮でき、かつ、裁判所に納める予納金の金額が少額で済むメリットがあるのです。
その予納金は、管財事件の場合が50万円するのに対し、20万円が目安です。かかる時間は、管財事件が半年~1年なのに対し、少額管財は2~5カ月程度です。
また、個人の民事再生である『個人再生』も、個人の再生に特化して調整されています。例えば、個人再生をすると個人再生委員が選任されますが、これは本当は法人の民事再生だと『監督委員』が選任されます。しかし、監督委員を選任すると費用が高額になるので、個人用に特化して、個人再生委員が選任されるのです。
そう考えると、この『特定調停スキーム』が、『中小企業の再生を応援する対策』として特化していることも、うなづけますね。被災した時の『被災ローン減免制度』などもそうですが、様々なケースに合った対処法が用意されているのは、有難いことです。
こうして考えると、様々なケースに合った対処法が用意されているんだね!だから自分のケースに最適な対応策がなくて不満に思っている人も、選択肢の多さを見れば、国も頑張ってくれてると気付けるね!
ぴよぴよ(たしかに)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!