特定調停で期限の利益喪失をすると一括請求を余儀なくされる?
特定調停で作成された調停調書の支払い計画に従えず、支払いを怠ることがあった場合、債務者は期限の利益を喪失します。往々にして遅滞約款には、2回の延滞があった場合において、期限の利益を喪失して一括請求を余儀なくされる旨が記載されます。
特定調停で作成する調停調書は、債務名義だからね!期限の利益喪失があると、すぐに強制執行になるよ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
特定調停で期限の利益喪失をすると一括請求となる
上にも書きましたが、まずは簡潔かつ事務的に説明します。
『特定調停で作成された調停調書の支払い計画に従えず、支払いを怠ることがあった場合、債務者は期限の利益を喪失します。往々にして遅滞約款には、2回の延滞があった場合において、期限の利益を喪失して一括請求を余儀なくされる旨が記載されます。』
この説明でわかる人は、たった3行でこの話は終わりですね。
『期限の利益』とは
しかし、わからない人の場合には、更にこの話を展開させて話す必要があります。まずは、『期限の利益』が何なのかですね。
債務者は、支払期日までに支払いを待ってもらう権利を持っている
つまり、債務者は本来一括でその借りたお金を返済する必要があるのですが、それを分割払いで支払っていくことを認められ、返済日を定めて、分割で借金の返済をしていくわけです。その『支払期日までに支払いを待ってもらう権利』を、期限の利益というわけですね。
しかし、約束通りに支払いができない場合、債務者は期限の利益を喪失し、一括請求を余儀なくされます。任意整理での和解案、特定調停での調停調書にて約束した支払日を守れないと、債務者はもう一括で残りの借金を返さなければならないということですね。
期限の利益がある債務者は、支払いを怠れば期限の利益喪失になる!そうなると、元々一括返済が原則なんだから、それに則って一括請求をするんだ!
ぴよぴよ(うーむ)!
期限の利益は『放棄』できる
また逆に、この期限の利益は『放棄』することができます。
民法第136条にはこうあります。
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
つまり、『無利息でのお金の貸し借り』の場合、期限の利益を放棄して、早めに一括返済をしてもかまわないということです。
ただ、その後に続く『ただし、これによって相手方の利益を害することはできない』ということからもわかるように、これが『利息付きの債務』の場合は話が変わります。債権者からすれば、利息を取って商売が成り立つわけですから、早めに債務者に期限の利益を放棄してもらって、一括返済されると、利息がつけられないから困るわけです。
しかし判例では、『支払った期間に応じた利息をつけて返済すればいい』という判断がなされました。つまり、本当は1か月後に、1ヵ月分の利息をつけて支払ってもらいたいところですが、裁判によって、2週間で返済したら、2週間分の利息をつけて支払えばいいということになったわけですね。
また、もしその時に債権者が『故意にお金を受け取らない』ということがあれば、供託をすることでその問題を解決できます。
無利息だとすぐに返済しても一年後に返済しても結局債権者は『儲からない』けど、利息があると、返済は長い方が利息をとれるよね!それをすぐに返すと利益が減っちゃうんだ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
任意整理と特定調停の違い
さて、任意整理においても、
『支払いを2回怠る→期限の利益を失う→一括請求を余儀なくされる』
というケースは当てはまります。
そしてそれは特定調停の場合でも同じことですね。特定調停の場合は、調停委員が『調停調書』、あるいは和解が不成立した場合は『17条決定』という決定書を作成するわけですが、その公文書にて約束された支払いを怠った場合、債務者は期限の利益を喪失し、一括請求を余儀なくされます。
その『支払いを怠った場合どうするか』ということを『遅滞約款』というわけですね。調停調書や決定書には、必ずこの遅滞約款が書かれています。
ただ、任意整理と特定調停とでは大きな違いが一つあります。それは、『債務名義』ですね。裁判所で作成されたこの公文書は、債務名義扱いとなるのです。
債務名義
強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書。つまり、これがあれば強制執行できる。
債務名義があれば、債権者は裁判所の許可なく強制執行をかけられますので、債務者は十分注意が必要になります。
一方、任意整理での和解書は、あくまでも裁判所を通さず、債務者と債権者の間で任意で行われた和解案をまとめたものですから、これだけでは債務名義とはなりません。従って、強制執行までには訴訟等の手続きを踏む必要があり、時間がかかります。
そう考えると、特定調停で決まった返済計画というのは、重みがありますね。強制執行については下記の記事に書きました。
また、下記の記事も併せてご確認ください。
遅滞約款には、遅れたときの対処法なんかを書くんだね!また、債務名義っていうのは公正証書と同じように、水戸黄門の印籠のような効力があるから注意が必要だよ!
ぴよぴよ(ひかえおろーう)!
もし強制執行が嫌なら
もし、支払いができない、あるいは強制執行は困るということであれば、残す選択肢は、
- 個人再生
ということになります。ただ、債務整理ではその2つしか残りの選択肢がありませんが、『任意売却』という選択肢もあります。
また別に、『友人から借りる』とか、そういう方法もあります。様々な選択肢の中から最善な選択をしましょう。状況を的確に判断し、最適化するためには、やはりこの道のプロである専門家、弁護士や司法書士に依頼しましょう。
特に特定調停をして弁護士に頼らなかったという人は、今度こそ確実な整理をする為に、弁護士に依頼した方がいいかもしれませんね。
弁護士と通さない特定調停は、それゆえに判断ミスを起こすリスクもあるからね!だからよほど知識に自信がある人じゃなきゃ特定調停は推奨できないなd!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!