任意整理で債権者を選ぶことは偏波弁済になる?ならない?
なりません。個人再生や自己破産であれば、『債権者平等の原則』によって偏波弁済かどうかが追及されます。
任意整理はそもそも債権者を選んで整理できるのが特徴だからね!それで選んだら偏波弁済だっていうことになると、きついよね!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
債権者の一部だけを整理することができる任意整理
任意整理は債権者の一部だけを整理することができる債務整理です。例えば、
- A社:高利
- B社:クレジットカード会社
- C社:担保あり(自動車ローン)
- D社:
であった場合、A社だけが金利が高いので、これを整理したいと考えた時、任意整理をすればそれが可能になるということです。この場合、B社を整理してしまうとクレジットカードが使えなくなり、C社を整理してしまうと自動車を引き揚げられてしまい、売却されてしまいます。
D社は金利が高くないので、A社だけを整理することが債務者にとって最もダメージが少ない選択肢だと言えます。
担保があったり保証人がいたりする場合は、その借金を整理すると被害が出るからね!その被害を抑えるために、任意整理は有効なんだ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
偏波弁済になる?ならない?
しかし、この様にして一部の借金だけを整理し、利息をカットしてもらうということは、偏頗弁済に当たるのではないかという疑問が浮かびます。偏頗弁済については下記の記事に書きました。
偏頗弁済(へんぱべんさい)
特定の人にだけお金を返す行為。えこひいきのようなもの。
破産法第252条にはこうあります。
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。※破産法(第二百五十二条 三)
自己破産であった場合は、この偏頗行為があったとき、免責は下りません。つまり、債権者に対して不公平な態度をとることは許されていないのです。
この考え方でいくと、この任意整理での一部の借金の整理は、どう考えても偏頗弁済ですよね。A社からすれば、
おい、何でうちだけ利息をカットするんだ!他の業者も同じように整理しなければ不公平だろ!
という考えを持ってしまいます。
偏波弁済はえこひいきみたいなものだね!債権者平等の原則を考えると、特定の誰かだけに返済をするという行為は認められないよ!自己破産では許可が下りないことにつながる!
ぴよぴよ(うーむ)!
任意整理の場合は問題ない
しかし、任意整理の場合はこれが認められるんですね。債務整理は、
とありますが、このうち、
- 任意整理
- 特定調停
- 過払い請求
は、特定の債権者を整理しても問題がないのです。
『あなたを借金返済から解放する方法』にはこうあります。
一部の債権者だけを除いて、任意整理を進めることはできますか?
任意整理は、債権者と個別に示談する手続きですので、示談する相手を選ぶことは可能です。例えば、住宅ローンや自動車ローンの返済を続ける為に、任意整理を避けること(自動車ローンを任意整理してしまうと車を返却しなければなりません)に合理性はありますが、信販会社を除くといったことはさほど合理性があるとは考えらえません。利息制限法で定められた約18%の利率以下であっても、今後の返済交渉が可能です。
これが任意整理の特徴ですね。そして特定調停は『裁判所を介した任意整理』の位置づけですから、同じ考え方になります。
また、過払い請求は、たとえば、
- A社:
- B社:
- C社:過払いあり
- D社:過払いあり
という状況があったとき、どちらにせよAとB社は過払い金がないので、選択肢から消えることになりますよね。だとしたらここにあるのは『一部の借金だけを整理する』ことになるわけですから、過払い請求もそれが認められる債務整理ということになります。ですから、
- 個人再生
- 自己破産
この2つが偏頗弁済に対して厳しい目で見られる債務整理ということになりますね。
とにかく任意整理は偏波弁済にならないんだ!初心者はこれを覚えておくだけで十分だね!
ぴよ(ふむ)!
債権者平等の原則が求められる個人再生と自己破産
この2つの共通点は、『債権者全員が強制的に対象になる』ということです。その他の債務整理のように、債務者の意志で整理する債権者を選べないんですね。ですから、個人再生や自己破産をしたなら、一部の借金だけを整理するのではなく、全ての借金を整理するのだと考えなければなりません。先ほどの、
- A社:高利
- B社:クレジットカード会社
- C社:担保あり(自動車ローン)
- D社:
のケースで考えるなら、B社のクレジットカードも使えなくなるし、C社の自動車も引き揚げられてしまうことになりますね。そういうデメリットがあります。しかしその代わりに、
- 個人再生:借金を5分の1以上にできる
- 自己破産:借金を全額帳消しにできる
というメリットがあるのです。ただ、今回考えるのは『債権者全員が対象になる』ということですね。
つまり、この2つが偏頗弁済に対して厳しい目で見られるのはどういうことかというと、『債権者平等の原則』から考えたとき、全員が対象になるはずの個人再生と自己破産において、一部の債権者だけがえこひいきされることは、他の債権者から見ると不公平だという発想に繋がるのです。
特定の債権者を整理できる任意整理ならまだしも、全員が対象の個人再生や自己破産で一部の債権者だけがえこひいきされるのは、不公平だ!
ということになるんですね。
個人再生や自己破産は、債権者の全員が整理の対象になるんだ!だからすべて『全債権者』という単位でまとめて考えていくから、その中で少しでも違う動きをすると、注意されるんだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
任意整理をした後に、結局自己破産をするのなら注意が必要
さて、これで偏頗弁済の考え方について分かったと思いますが、任意整理においても気を付けなければならないことがあります。それは、『任意整理をした後に、結局自己破産をする』という事態に発展したときのことです。例えば先ほどの、
- A社:高利
- B社:クレジットカード会社
- C社:担保あり(自動車ローン)
- D社:
のケースで考えた時、A社だけを任意整理しようとして交渉します。弁護士から受任通知を受け取ったA社は、任意整理の手続きが終わるまで、一切の支払いを受けられなくなります。その間債務者は、B~D社にのみ支払いを続けます。
しかしその後、やはり自己破産にするしかないという結論に至ったとします。すると、A社には、B~D社がその間に受け取っていた支払いを受け取れなかった、という機会損失が起きます。
自己破産をするとなると、偏頗弁済をしていた場合は、自己破産の免責が下りません。
この記事に、友人や知人に悪いからといって特別待遇が過ぎると偏頗弁済(へんぱべんさい)扱いとなり、自己破産手続きができない可能性があると書きましたが、『自己破産手続きの前』であっても偏頗弁済があった場合は、自己破産自体が取り消しになってしまう可能性があるので注意が必要です。
この場合は『最初から自己破産にするべきだった』という結論ですね。こういった問題が起きないようにする為にも、弁護士や司法書士に頼んで確実な債務整理をしましょう。
債務整理をして、結局支払えなくて他の債務整理に変更、移行するということは結構あるよ!だからしっかり考えてから行動しないとね!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!