任意整理の和解書って何の意味があるの?
任意整理で利息をカットしてもらい、分割払いをするためには和解書(合意書)が必要です。和解書があれば、任意整理後の債務者と債権者との間の意見の食い違い等のトラブルを防止できます。
何にせよ、口頭での約束では『言った、言わない』の水掛け論になりますからね。何かの約束事をするときはきちんと書面で残しておき、双方がそれを保持しておくことが大切です。
和解書や契約書など、書面があるかないかでは大きく違うからね!人の記憶は曖昧で完ぺきではないから、その不足分を補うためにこうして書類を利用するんだ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
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和解書があればトラブルを防止できる
任意整理で行うのは、債権者との交渉です。例えば、
- A社:100万円
- B社:100万円
- C社:100万円
- D社:100万円(高利)
と借金があった場合、高利のD社だけ、交渉によって利息をカットしてもらいたいと考えて、弁護士等に依頼してそれをD社に交渉します。その際に必要なのは、『和解書(合意書)』です。
この際、書面で用意しなくても契約は成立します。ちなみに、
にも書いた様に、『金銭消費貸借契約』も口約束だけでも成立します。
しかしその記事にも書いた様に、やはり言った言わないの水掛け論になるのが人間ですので、しっかりと書面に残しておくことが無難でしょう。 きちんと和解書を2通作成して、それを、
- 債権者
- 債務者
の双方でしっかりと保管しておくことで余計なトラブルを避けることができ、スムーズな任意整理に繋がります。
債権者が、その和解書の内容に合意してくれれば任意整理は成立します。裁判所を介さない任意整理は、文字通り『任意』であるため、債権者がそれに合意しなければ交渉は決裂となります。
もし債権者が任意整理を突っぱねて断った場合は、特定調停をして裁判所を介入させる手もあります。それで裁判所がその和解書の内容に納得すれば、債権者は言うことを聞くことがあります。
その理由の一つには、特定調停の調停調書が債務名義だからということも挙げられるでしょう。債務名義があれば裁判所の許可を得ずに強制執行できますからね。
こうやって書類で約束をしてくのが始まった理由は、おそらく同じような理由からだろうね!昔の人も、記憶は曖昧だったから。間違いのないように書類に残し、問題を解決していったんだね!
ぴよぴよ(人間の長い歴史で培われたっす)!
利息の引き直し計算で判明した結果についても記載する
任意整理を依頼すると、弁護士はまず利息の引き直し計算をして、利息制限法違反があるかどうかチェックします。その時に、もし『払い過ぎた利息』があれば、それは『過払い金』として扱われるので、返金してもらうことになります。
これは当然ですね。『払い過ぎている』わけですから。
なぜこのようなことが起きるかというと、
このページにあるように、『グレーゾーン金利問題』があったからです。
2006年に最高裁判所において、『グレーゾーン金利』による過払いの返金を求める判決が出たのですが、債務者は、それまでそのグレーゾーン金利と呼ばれている、高金利を支払うことを余儀なくされていました。グレーゾーン金利というのは例えば、
- 18%~29.2%
の間の金利のことです。つまり、『利息制限法』では年利18%までの金利を取っていいことになっていたのですが、『出資法』で年利29.2%まで許されていた。その間に、『グレーな金利があるじゃないか』ということで、大手金融会社もこぞってこのグレーゾーン金利を客から絞り取っていたんですね。
- 利息制限法:18%
- 出資法:29.2%
こうした事実があることから、任意整理の際に『払い過ぎた利息』が存在することが発覚することがあるわけです。その場合は、この利息の引き直し計算の際に明らかになります。そしてその分を返金してもらい、減額してもらいます。
和解書には、このときに明らかにした事実をしっかりと書き記し、今後そういった請求をしないようにしてもらう旨を記載します。
でも2018年になった今、もうほとんど過払い金もないだろうけどね!だけど、過払い金がピークを迎えた時期と比べればないだろうけど、計算し直すと間違っていることもあるからね!
ぴよぴよ(とにかくやってみるっす)!
基本的には利息をカットし分割払いする
また、任意整理は基本的に分割払いをする約束を交わします。原則その期間は3年~5年。つまり36~60ヵ月です。しかし、状況によっては一括払いをすることもあります。
債権者にしてみると一括返済の方が安心だし都合がいいので、一括返済を選ぶと負債額を1〜3割程度減額してくれることがあります。この辺りの詳細は、それぞれの債務状況によって変わってくるでしょう。
下記の記事にも書きましたが、
利息というのは以下の種類があります。
経過利息
最後に返済した日から、任意整理で和解が成立した日までの期間に発生した利息
将来利息
任意整理で和解が成立した日から、完済し終わるまでに支払うはずだった利息
損害遅延金(延滞利息)
返済期日に支払われないことにより発生した損害賠償金
そして、その中で経過利息だけは支払えと言う業者もいます。しかし往々にしては、将来利息はカットできるので、その場合は利息は払わないで済むことになります。
経過利息だけを支払うよう要求する場合は、債権者の資金的な体力が乏しいなどの理由が考えられるよ!窮鼠が猫を噛むように、追い詰められている人は攻撃的になるからね!
ぴよぴよ(うーむ)!
分割払いの詳細を記載する
- D社:100万円(高利)
の件で考えてみましょう。この利息が年利15%だったとします。
計算
100万円×15%=15万円(年に支払う利息)
15万円×3年=45万円(3年で返した場合に払う利息の合計)
もし任意整理をしないで3年で返済する場合は、45万円の利息を払うことになりました。しかし、任意整理によってこの利息を蚊っと、つまり帳消しにすることができます。
計算
145万円-45万円=100万円
ですね。元金の100万円だけを支払えばいいということになります。36ヵ月で払うと計算した場合のそれぞれの支払額は、
計算
145万円÷36=40,277円
100万円÷36=27,777円
で、1.3万円分支払わずに済むことになります。 和解書には、こうした分割払いでの支払いを許可してもらうよう、記載します。
和解書にはこうしてどれだけの分割払いで、いくら払っていくかということを事細かく記載するよ!きちんと計算しつくして返済計画を立てることが求められるね!
ぴよぴよ(適当ではダメっす)!
債権者の権利(一括返済)についても記載する
和解書に書くのはそれだけではありません。これだけではただの債務者のわがままですね。債権者のことも考えた旨を記載する必要があります。それは例えば、
- 分割払いを約束したのにもし支払いを怠ったら、一括請求に応じる
- 分割払いを約束したのにもし支払いを怠ったら、損害遅延金の請求に応じる
という旨です。これくらいは当然ですね。債権者には何かと迷惑をかけているわけです。この件で債権者は利益を得られませんからね。お金を貸して利息を得て成り立っている職業なのに、その利息、つまり利益を全く得られず、焦げ付くリスクも背負い、更に余計な手間までかかるわけですから、債権者のことを考えて、これくらいのことは考えなければなりませんね。
これを専門的に『期限の利益喪失』と言います。
期限の利益
債務者は、支払期日までに支払いを待ってもらう権利を持っている
つまり、分割払いというのは本来『支払を待ってもらっている』わけで、本来は一括で支払わなければなりません。分割払いによって債務者は期限の利益を得ているわけですが、もし支払いを滞らせたら、この期限の利益を喪失する、ということを記載するわけです。
約束を破ったら一括で払いますよ。
ということですね。損害遅延金に関しても同じ考え方です。
約束を破ったら損害遅延金を払いますよ。
ということですね。債務者は期限の利益によって守られている権利を、約束を破ることで喪失するということですね。これがきちんと約束されていれば、債権者としても和解書に合意しやすくなりますよね。
期限の利益を喪失すると、一括返済を余儀なくされるよ!だけど債権者にとってはこういう約束をしておくことが保険になるからね!債務者だけのことを考えたものは、和解書とは言えないよね!
ぴよぴよ(たしかに)!
和解書の書き方
和解書の書き方は特に決まっていませんが、例えばこういう内容を記載します。
『乙(債務者)は、甲(債権者)に対し、和解金として金○円の支払義務があることを認める』
この様にして、一括でも分割でも、『結局いくら支払うことになったのか』という旨について記載します。その際、例えば分割であれば、
『乙(債務者)は、甲(債権者)に対し、前項の和解金を分割して、○年○月から○年○月まで毎月○日限り、各月金○ずつ、甲指定の銀行預金口座に振り込む方法によって支払う』
という風に、分割払いの詳細を記載します。まあ、甲とか乙とかそういう専門用語はどうだっていいです。これは名残ですからね。当時は甲とか乙とか、いろはにほへと、とか、文章を左から読むとか、そういうことが『常識』でした。
今は常識ではありませんよね。何かこうした書き方をするとそれっぽく見えますが、書いてあることは子供が約束をするときの内容と何ら変わりません。
いつまでにいくら、こうやって返すね。
と書いてあるだけですからね。難しく考えず、
へえ、そう書くんだ。
ぐらいに思えばいいことですね。書いてあることは至極単純な内容ですからね。
海外ではその国の慣習に則って、書類を作成することになるね!だからこの日本では、日本の慣習に則って書けばいいのさ!弁護士が全部やってくれるけどね!
ぴよ(ふむ)!
和解書には『清算条項』も必要
また、和解書には『清算条項』も必要です。
清算条項
和解書に記載されている債権債務の他には、債権債務がないことを明記する条項。
債務総額と清算条項がきちんと記載されている和解書を作成することが、スムーズな手続きをする為のポイントになります。
ちなみにこの和解書というのは、業者ごとに用意する必要があります。上記で考えたのは、『高利のD社だけ』を任意整理する場合でしたが、複数社を任意整理する場合は、それぞれに和解書を作成する必要があります。それぞれの債権の内容が違いますからね。一つ一つカスタマイズしていく必要があります。
これは手間ですね。一つの和解書を作成し、一斉に送信して理解してくれれば手っ取り早いのですが、一つ一つは違う債権者ですので、そうはいきません。ですから、弁護士や司法書士は債務整理をする際に報酬として、
- 着手金=整理した会社1社につき2~3万円(0円の場合もある)
- 成功報酬=整理した会社1社につき2~3万円
- 減額報酬=減額した負債額の1割(0円の場合もある)
弁護士や司法書士の報酬
着手金 | 成功報酬 | 減額報酬 |
---|---|---|
2~3万円(0円の場合もある) | 2~3万円 | 減額した負債額の1割(0円の場合もある) |
等として、1社ごとに報酬を設定しているんですね。1社が成功し、違う1社が失敗する可能性もありますから、この様に一つずつで分割して計算していくわけです。
弁護士に依頼すると『一社につき』という計算をされるけど、その理由の一つにはこういう背景があるんだね!単純に、一社ごとの仕事量が結構あるってことさ!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!