個人再生で家賃の滞納や水道光熱費の支払いは減額される?
個人再生における家賃の滞納は減額の対象になります。しかし、そうなることによって、賃貸物件の契約を解約させられることになる可能性があります。
また、水道光熱費は一般優先債権となりますので、減額されません。しかし、個人再生における再生計画案に従って返済する必要はなく、随時弁済することができます。
家賃の滞納分は減額できるよ!水道光熱費は減額できないよ!それぞれが注意点があるから詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
自己破産なら免除される
個人再生をする際に家賃の滞納があればどうなるでしょうか。下記の記事では自己破産の場合における、家賃の滞納について記載しました。
自己破産の手続きに滞納家賃を含めた場合、未払い分の賃料は免責されます。滞納家賃を免責にした場合、支払い義務はなくなるわけです。水道光熱費においても同じことです。滞納があるものは全て免責となります。
免責とならないものは『非免責権』と言われますが、それに家賃や水道光熱費は該当しないんですね。
これは個人再生においてもほとんど同じ考え方が採用されます。個人再生の場合は、『非減免責権』と言います。
- 自己破産=借金が帳消しになる=非免責権
- 個人再生=借金がが減額される=非減免責権
ということですね。
個人再生は大幅な借金の減額が出来ることがメリットと言えますが、そんな個人再生でも減額出来ない債権があります。それは、
- 住宅ローン
- 非減免責権
- 一般優先債権
- 共益債権
です。
このうち、住宅ローンについては、下記の記事に書きました。
住宅ローンは減額できませんが、しかしこれは、
整理の対象になり、減額されるということは、担保である住宅を引き揚げられることを意味するので、住宅ローン特則によって住宅ローンだけを整理の対象から外せることは、むしろ有難い。
という本音を持つ人がほとんどでしょう。
自己破産だったら家賃も水道光熱費も免責になるんだね!支払いはしなくてもいいということになるよ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
水道光熱費は個人再生によって減額されない
また、共益債権については下記の記事、
一般優先債権については下記の記事に書きました。
このうち一般優先債権は、『先取特権』という権利が関係しています。
先取特権
法律で定められた債権を有する者が、他の債権者に優先して弁済を受ける権利
記事にも書いた様に、一般優先債権は、
- 一般の先取特権
- 一般の優先権がある債権
の2つがあります。それぞれ、
一般の先取特権
- 光熱費などの滞納料金
- マンション管理費や積立金
- 未払い給料
- 葬式費用
- 日用品供給
一般の優先権がある債権
- 滞納税金
- 社会保険料
- 罰金
などが挙げられます。これをまとめて考えると、
- 住民税、所得税などの地方税(滞納税金)
- 国民年金、国民健康保険、社会保険料、罰金など
- 従業員、被雇用人への未払い賃金等
- 光熱費のうち過去6カ月までの滞納分の支払い
となります。
つまりここに『水道光熱費』が出てきましたね。従って、過去6カ月までの水道光熱費の支払いに関しては、個人再生における再生計画案に従って返済する必要はなく、随時弁済することができます。その代わりそれは、個人再生によって減額されないということを意味しますから、注意が必要です。
個人再生の場合は水道光熱費は減額されないんだね!だけどその代わり、他の借金と同じように返済をする必要はなく、通常通りに支払うことができるよ!
ぴよぴよ(うーむ)!
支払いができない場合はどうなる?
では、減額の対象にならないということで、支払いができず、電気やガスが止まってしまったらどうすればいいでしょうか。実は、この場合は個人再生手続きが開始されれば、電気やガスが止められることはありません。
民事再生法第50条にはこうあります。
再生債務者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始の申立て前の給付に係る再生債権について弁済がないことを理由としては、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
継続的給付の義務を負う双務契約
電気やガスの料金を支払う契約のこと
つまり、個人再生前の滞納があっても、開始後に支払いが行われれば、ガスや電気は止められないということになります。個人再生は『債務者が債務を支払う為のバックアップをする』ことが目的であり、『追い込んで殺す』ことが目的ではありませんから、債務者がしっかりと3年間の返済期間の間に、約束した支払いができる様な、最低限の環境を確保できるよう、配慮されるわけですね。
電気やガスの滞納があっても、個人再生の後に支払いが行われれば、止められないんだね!生活の基盤は守られるわけだ!
ぴよ(ふむ)!
個人再生における家賃の滞納は
では、個人再生における家賃の滞納はどうでしょうか。これは、自己破産同様、減額の対象になります。しかし、自己破産の際同様、そうなることによって、賃貸物件の契約を解約させられることになる可能性があります。であるからして、普通はまず、
家賃だけは先に払いたい
と考えるでしょう。しかし、自己破産の記事にも書いた様に、それでは偏頗弁済になる可能性があります。自己破産の場合はそれが理由で、免責が不許可となってしまいます。
偏波弁済(へんぱべんさい)
特定の債権者にだけ返済をすること。えこひいきみたいなもの。
個人再生の場合においても同じことで、それは債権者平等の原則に逆らう行為ですから、それが認められることはありません。
しかし、先ほど言った『約束した支払いができる様な、最低限の環境を確保できるよう、配慮される』という考え方で言うと、この家賃の滞納問題の解決による、債務者の居住の確保という問題は、配慮されてもいいのではないか、という発想が頭をよぎります。
しかし、あくまでもそれは『最低限の環境の確保』ですからね。もし居住の確保まで手を回すということであれば、最初から国は、国民に家賃や水道光熱費など支払わせなければいいということになってしまいます。国によっては消費税がなかったり、保険料がかからないところもありますからね。国によって国民へのバックアップの仕方、配慮の仕方、尊重の仕方というものは異なってくるのです。
家賃の滞納分は減額できるけど、そうすると家に住めなくなる可能性があるよ!だから、もし引っ越し先がすでに決まっている場合は強気になれるね!
ぴよぴよ(たしかに)!
国は個人の家賃の面倒までは見ない
例えば日本で言えば、国民の三大義務にあるのは、
- 勤労
- 教育
- 納税
ですね。これはもう憲法で定められています。
『憲法の最高法規性』とは、『憲法に逆らえる法律はない』ということ。つまり、憲法で定められているこれらの三大義務は、何よりも優先して国民が重んじなければならないもの。ですから先ほどから出ている、
- 非免責権
- 非減免責権
には、しっかりと納税が挙げられていますね。
そしてこの中には『勤労』も含まれています。そうすると当然、『収入』が得られますね。その収入によって、家賃や水道光熱費を支払えるはずです。ですから、まず国として考えるべき国民へのバックアップや尊重の考え方とは、
まず何よりも働くべし。そして、そのお金で優先的に支払うべき支払いを済ませ、その残りで自分自身の人生を謳歌すべし。
というものが存在することになります。
その憲法の中で一番偉い条文は憲法13条です。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
つまり、この日本で最大限に優先されるのは、『義務を果たした上で行われる、個人の権利の尊重』ということになりますね。
そうなると、ここで挙げられている家賃の支払いまでを国がやってしまうと、この辺りのテーマが崩れてきますね。
働かなくても国が支払いをしてくれるから、働かなくていいや!
という人が出てきてしまいます。ですから、この日本においては、国が個人の家賃の面倒までは見ないということが原則的なのですね。
それに、日本には様々な社会保障や、生活保護等の扶助制度がありますから、それらの制度をうまく利用しながら、基本的には自立して生きていく必要があります。
国が個人の家賃の面倒まで見ちゃうと、怠け者が増えちゃって社会が破綻するよね!日本は働きすぎるって海外からも見られているけど、それで結局GDPが世界トップ3なんだ!
ぴよぴよ(うーむ)!
それでは家賃は結局どうなるのか
ただし、そうは言ってもこの場合に陥ったら仕方ありません。その場合は裁判所が、
このままでは再生計画の履行が不可能になるか…
と判断した場合、裁判所から弁済許可を受ければ、再生手続開始決定後にも再生債権を弁済することができます。その代わり、それが認められるのは比較的その滞納された金額が少額である場合のみということになります。
この家賃の滞納の問題ですが、先ほど言った様に優先的にこれを支払ってしまうと、偏頗弁済に当たります。しかし、支払わないと賃貸物件を解約され、家を追い出されます。では一体どうすればいいでしょうか。
一番いいのは、家族や親せき等の第三者にこの滞納分を支払ってもらうことです。自分で支払うのは認められませんが、第三者が支払うことは認められていますので、ここはそのルールに則って、そうするのが得策ということですね。
また、家賃は開始決定前なら再生債権、決定後なら共益債権となります。ですから、開始決定後にはその他の債権とは別で、随時この支払いができます。例えば、
- 3年間、毎月3万円の支払いをすると決まった
- しかし、家賃が毎月8万円かかる
という場合、この8万円は共益債権として扱われますから、通常通り、家賃としてそのままその他の再生債権とは別で、優先的に支払うことが認められるということですね。
もし滞納額が少額であれば、裁判所がその支払いを特別に認めることがあるっていうことだね!だけど一番いいのは家族等に支払ってもらうことだ!
ぴよぴよ(うーむ)!
青偏波弁済と清算価値について
ちなみに、偏頗弁済についての対応としては、例えば30万円の滞納があった場合、その30万円を特別扱いして払ってしまうことは、債権者平等の原則に逆らう行為で認められないと書きました。もしそうした場合は、清算価値にその30万円を上乗せする必要があります。清算価値については以下の記事で確認してください。
しかしそれを逆手にとって、あえて清算価値を上げていく方法を採り、先に家賃滞納分を偏頗弁済してしまうという手もあります。しかし実際にはそれだと余計な金額を支払うだけですから、強引すぎるやり方ですね。
家賃の滞納がある場合は、この問題を機に一度家賃、水道光熱費を含めた自分の入支出問題について、真剣に考え直す必要がありますね。
清算価値を上げて、債権者に払う支払う額を増やせば問題を解決できるんだね!多少強引だけど、それがベストな状況もあるかも!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!