個人再生手続きで給与差押えを中止させる方法は?
個人再生手続きを申し立てれば、給与の差押が行われていた場合、その強制執行を中止させることができます。
また、『債権者に取り下げてもらうようお願いをする』ことによって、中止させることができることがあります。その場合は、個人再生手続きをすることが条件となります。
個人再生手続きを申し立てれば強制執行を中止できるので、その前に債権者にお願いをしておけば、『まあどうせそうなるし』と言って、取り消せることがあるよ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
受任通知を送ったら督促や取り立て行為が止まる理由
個人再生をすると、給与の差押を中止にしたり、取り消したりすることができます。個人再生でも任意整理でも、弁護士が介入して、そしてその受任通知を債権者に送った場合は、債権者は督促や取り立て行為を行ってはならないということになっています。
しかし、なぜ受任通知を送っただけで督促や取り立て行為が出来ないのでしょうか。弁護士が介入したことが何かそんな特別なことなのでしょうか。
実際には、弁護士が介入したということは、『=この債権の取り扱いを今から最適化する』ということになります。債権者にも督促等の権利を持っていますが、同じように債務者にも権利を持っていますので、そのお互いの権利を平等に考えて、最適な判断を下す、という意思表示が、ここで言う弁護士介入による受任通知になるわけです。
ですから、受任通知が送られた時点で債権者は、
うーむ。では一度リセットして、今回の債権の滞り問題をどうやって解決するか、これから債務者側の意見を聞きながら、考えていくしかないな。
と考えなければならないわけですね。
弁護士が介入すると、例えば容疑者が『黙秘権を行使した』みたいなもので、法律上そうなっているから、それを堂々と行使するなら、それに逆らえないかなあ、ってことになるんだね!
ぴよぴよ(ちょっとよくわかんないっす)!
真正面から法律を駆使すると、人はぐうの音も出ないんだ!黙秘権も、一人でやってると揺り動かされるけど、弁護士が介入すると、法的に対処してくるから警察も何も言えないよね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
偏波弁済と給与差し押さえについて
例えば、『偏頗弁済』というものがあります。
偏頗弁済(へんぱべんさい)
えこひいきみたいなもの。特定の債権者にだけ支払う特別扱い。
これは、債務整理が行われた場合に浮上してくる問題です。債務整理には、
とありますが、このうち過払い請求は別枠として、その他の債務整理は皆、『債権者平等の原則』を重んじることが求められます。つまり、特定の債権者だけが特別扱いを受けるのは不公平であり、債務整理の妨げとなると判断されるのです。
- A社:50万円
- B社:50万円
- C社:50万円
- D社:70万円
とあった場合、D社の70万円だけが高額だから、とかいう理由で、D社だけを支払うことは認められません。それをすることは偏頗弁済に該当します。偏頗弁済をすると、特別扱いを受けたD社だけは満足するかもしれませんが、その他の三社が不満を持ちます。
すると、その偏頗弁済のせいで全体の平等性が欠け、債務整理自体が上手くいかなくなります。債務整理をする目的は、『特定の業者を特別扱いすること』ではなく、『債権者を平等に扱いながらも、債務者に無理な支払いをさせないようにする』ことにあります。ですから、偏頗弁済をすることは債務整理の目的からずれた行為になるんですね。
そうなると、給与の差押があった場合で考えてみたとき、
- A社:50万円(給与の差押)
- B社:50万円
- C社:50万円
- D社:70万円
A社だけが給与の差押をすることは、偏頗弁済の考え方からして、不公平になってしまいます。ですから、個人再生手続きを申し立てれば、給与の差押が行われていた場合、その強制執行を中止させることができるということになるんですね。
一社が給与の差し押さえをすると、債権者平等の原則がないがしろにされるね!個人再生をするとその原則を遵守する必要があるから、これによって差し押さえができなくなるんだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
『申し立て時点』か『開始決定時点』によって変わる
ポイントとしては、個人再生の申立てをした時点、手続きの開始決定がされた時点、でそれぞれ条件が異なるということですね。
個人再生では、『申し立て時点』または『開始決定時点』で給料差し押さえが中止されるのですが、『申し立て時点』で給料差し押さえを中止するには、裁判所の命令が必要ですが、『開始決定時点』になれば、自動的に給料差し押さえは中止されます。
民事再生法第26条にはこうあります。
裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第二号に掲げる手続又は第五号に掲げる処分については、その手続の申立人である再生債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。
二 再生債権に基づく強制執行、仮差押え若しくは仮処分又は再生債権を被担保債権とする留置権による競売の手続で、再生債務者の財産に対して既にされているもの
また、裁判所の命令で強制執行が止まることについての法律もあります。
民事執行法第39条にはこうあります。
強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一 債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本
裁判所の中止命令の正本はここでいう執行力のある裁判の正本(債務名義)に当たりますので、これを提出することで給与の差押え手続きを停止することが可能になるんですね。
債務名義っていうのは強制執行の力があったり、あるいは強制執行を停止させる力があったりして、とにかく水戸黄門の印籠みたいな力があるんだ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
取り消し以外の選択肢
ただし、このようにして強引に給与の差押を取り消しにさせる方法以外にも選択肢はあります。それは、『債権者に取り下げてもらうようお願いをする』ということです。債権者に弁護士から受任通知を送った段階である程度の覚悟を示した後に、債権者に、
これから個人再生手続きに入ります。そうなると給与差押等の強制執行は最終的に失効となりますので、よろしければ今その差押を取り下げてもらえるようお願いいたします。
等としてお願いするのです。そうすれば、
まあ確かにそうなれば強制的に失効になるな。今取り下げるしかないか
として、それに応じてくれる可能性があるんですね。警察が取り扱う事件と同じで、被害者が被害届を取り下げれば事件として扱えなくなるように、このようなケースでも、強制執行を取り下げると、この話はもう解決となります。
もちろん、その後にきちんと個人再生の手順を踏むということが条件ですね。その約束を破る様なことがあれば、給与の差押だろうが住宅の引き揚げだろうが、何をされても文句は言えません。
どうせ個人再生をすれば中止することになるから、債権者はそれで取り下げる可能性が高いよね!手続きだけが面倒になるだけなんだから!
ぴよぴよ(たしかに)!
任意整理では給与差し押さえを中止できない
ちなみに、債務整理の中でも、給与の差押えを中止させることができるのは、
- 個人再生
- 自己破産
だけです。任意整理ではできませんので、注意が必要です。
また、下記の記事に書いた様に、もし、せっかくこの差し押さえの問題を解決して、個人再生手続きが開始できたのに、その後、返済をする約束を決めた後に支払いが出来なくなった場合はどうなるでしょうか。
もし、やむを得ない状況に陥ったからという理由で自暴自棄になったり、あるいは何の対策もせずにそのまま支払いを怠ってしまえば、これは債権者から個人再生の取り消しを申し立てられます。そうなると、
- 減額された借金が元に戻る
- 住宅ローン等がある場合はその担保は引き揚げられる
等の散々な目に遭い、更に窮地に追い込まれることになるでしょう。その場合、下記の記事を参考にしてください。
強制執行を中止できる力があるのは個人再生と自己破産だけだね!それ以外がは中止できないから注意が必要だよ!
ぴよぴよ(ふむふむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!