個人再生のハードシップ免責ってなに?
個人再生の支払いで返済不能になった場合、すでに4分の3を支払っていた場合なら、わざわざ自己破産をしなくても、残りの4分の1を免除してもらえる制度です。
例えば、500万円→100万円になった場合、その100万円の4分の3、つまり、75万円の支払いが終わっている場合は、その残りの25万円の支払いを免責にしてもらえる、つまり、帳消しにしてもらえるということです。
ハードシップ免責は、いうなれば『4分の1自己破産』みたいな感じかな!それには4分の3が支払い終わってなければいけないよ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
ハードシップ免責とは?
個人再生におけるハードシップ免責については、下記の記事にも少し書きましたが、ここでは更に特化して説明します。
また、下記の記事では、『再生計画の変更』を届け出る際に、もしハードシップ免責を受けられる条件が揃っていれば、それを検討するべきであるということも書きました。
ハードシップ免責とは、
返済期間を延長しても返済を続けることができそうもない場合、すでに再生計画に定められた返済金額のうち4分の3以上の返済が終わっている場合、自己破産せずに残りの借金の免責を裁判所に申し立てることができる制度
のことですね。つまり、下記の記事で個人再生が5分の1程度借金を減額できることについての詳細を書きましたが、
500万円→100万円になった場合、その100万円の4分の3、つまり、75万円の支払いが終わっている場合は、その残りの25万円の支払いを免責にしてもらえる、つまり、帳消しにしてもらえるということです。
4分の3が終わっていれば、後の4分の1はいいよってこと!だけどそれにはもちろん、返済不能になっていることが条件だからね!自己破産をしないでも、っていうことだから!
ぴよぴよ(なるへそ)!
受けるためには条件がある
普通は『借金の帳消し』になると、自己破産しかありません。ざっと説明すると、
- 任意整理=利息のカット
- 特定調停=(裁判所を通した任意整理)
- 個人再生=借金の大幅減額
- 自己破産=借金の帳消し
ということになります。ですから、ハードシップ免責は自己破産をせずに借金を帳消しにできるので、有難い制度と言えますね。
民事再生法第235条にはこうあります。
再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
一 第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
法律にもきちんとこうあります。
ハードシップとは、直訳すると『困難、困窮、苦痛』を意味します。ですから、個人再生で支払いをすることが極めて困難となり、生活に困窮している人は、このハードシップ免責によって救いの手を差し伸べられるということですね。
ただ、注意するべき点は、『再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり』ということですね。つまりこういうことです。
『本当に支払い困難に陥った理由が、浪費やギャンブルや単なる自己管理不足といた債務者の自分勝手な理由でなく、病気や事故等のやむを得ない事情であり、更に、それまで確実に支払いを続けてきて、債務者に落ち度は見当たらない場合』
という条件が突きつけられます。ですから、もしこのハードシップ免責を悪だくみ的に利用しようと考える人がいた場合、ここで淘汰されることになります。
しかし逆に言うと、そうやって真面目に確実に支払いをしてきて、4分の3まで終わって、それなのに急にそういう不慮の事故や被災、病気等の原因によって不幸な目に遭い、どうしても支払いができなくなった、という状況にある人は、このハードシップ免責によって救われることになりますね。
というか、そういう人を救うための措置としてこの制度が設けられているのです。そこをはき違いさえしなければ、何も問題ありませんね。
ただ、もう少しだけ条件があります。それは以下の通りです。
- 再生計画の変更(延長)をしても返済ができないこと
- 免責の決定が再生債権者の一般の利益に反しないこと
再生計画の変更(延長)をしても返済ができないこと
まず『再生計画の変更』ですが、下記の記事に書いた様に、やむを得ない状況があった場合は、まず再生計画の変更にて、期間の延長をすることが推奨されています。ですから、まず最初に期間の延長を検討し、それで対応できるなら、延長して支払いをする必要があります。
免責の決定が再生債権者の一般の利益に反しないこと
また、『免責の決定が再生債権者の一般の利益に反しないこと』はどういうことかというと、『清算価値以上の返済が終わっていること』と言い換えることができます。清算価値については、前述のリンクした記事に書きました。あえてもう一度リンクするなら下記の記事です。
例えば、清算価値が90万円だったとします。そして最低弁済額基準は100万円だったとします。小規模個人再生の場合は、
- 最低弁済額基準
- 清算価値
のどちらか高い金額が、最低限返済しなければならない金額になります。
従って、支払いが100万円に決定しました。
上の例のように、4分の3の75万円の支払いが終わりました。そこで、やむを得ない状況に陥り、ハードシップ免責を受けようと考えました。しかし、本来は清算価値として90万円あったわけですから、
計算
90万円-75万円=15万円
で、もし最初から自己破産をしていれば、債権者は90万円を得ることができたので、このままでは15万円の損をすることになります。これでは『再生債権者の一般の利益』に反してしまいますので、ハードシップ免責は受けられないんですね。
民事再生法第235条にはこうもあります。
三 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
普通は支払い不能に陥ったら自己破産しかないんだ!だけどこの場合なら、わざわざ自己破産をしなくても済むんだね!そのためには条件があるっていうこと!
ぴよぴよ(なるへそ)!
住宅ローンも免責の対象
また、このハードシップ免責で免責になるのは、
- 共益債権
- 一般優先債権
- 非減免責権
以外のすべての債権です。これについての詳細は下記の記事に書きました。
つまり、住宅ローンもここに含まれるわけですね。
民事再生法第235条にはこうもあります。
6 免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
住宅ローンについては下記の記事に書きましたが、
通常なら住宅ローン特則によって、整理の対象から外すことによって、住宅を残しておくことができます。つまり、住宅ローンについてはそのまま減額されずに返済をし続ける形を取っていたはずですね。しかし、ハードシップ免責によってこの住宅ローンについても免責されるのです。
共益債権や一般優先債権なんかは同じように免責の対象外だね!これは結局自己破産をした場合でも同じだからね!
ぴよぴよ(うーむ)!
別除権や担保権には影響しない
ただ、気を付けなければならないのは、このハードシップ免責が別除権や担保権には影響しないということです。つまり、債権者はこうなったとき、担保権を行使して住宅を引き揚げ、処分してお金に換え、それを返済金に充てることができます。
これは自己破産でも同じことですからね。自己破産は、
- 換価20万円以下の財産
- 99万円以下の現金
- 生活に必要最低限の家財道具
以外の全ての財産を処分する代わりに、借金を帳消しにできるわけですから、借金が免責になるハードシップ免責によってこういった事態になることは、当然の結果と言えるでしょう。
民事再生法第235条にはこうもあります。
7 免責の決定の確定は、別除権者が有する第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
また、ハードシップ免責を受けると7年間は給与所得者等再生手続き、自己破産尾申し立てができませんので注意が必要です。
だから担保を持っている人なんかは、それをお金に換える権利を行使することができるよ!そのあたりに注意しながら、状況を最適化していこう!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!