個人再生の債権者一覧表で、もし債権者漏れが発覚した場合はどうなる?
もし故意に『債権者隠し』をしてしまった場合、『虚偽の申告』に該当するため、最悪の場合、詐欺再生罪として十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金です。
もし『故意ではない債権者漏れ』ということなのであれば、債権届出期間中に届け出を出せば申告は間に合います。
また、追完、無届債権、劣後化というキーワードについてもチェックしておきましょう。
債権者漏れとか財産目録の記入漏れとか、そういうことは基本的に隠蔽的な行為として、『財産隠し』的な目で見られるから注意が必要だよ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
債権者一覧表には必ず漏れなく書く必要がある
個人再生をするときの流れは下記の記事に書きました。
その中で、『債務の届け出・調査・確定』という部分がありますね。ここでは、下記の記事に書いた様に、書類が必要になります。
まず原則として提出する書類は、
- 1.申立書
- 2.収入および主要財産一覧表
- 3.債権者一覧表
- 4.陳述書
ですが、今回考えるテーマは『債権者一覧表』についてですね。ここには文字通り、債権者を一覧にして書きます。
- 金融業者
- 会社
- 同僚・知人
- 家族・親戚
どんな相手でも債権者です。お金を借りている相手の全ての名前と、その金額をこの債権者一覧表に書く必要があります。ただし、下記の記事に書いた様に、
慰謝料や養育費は『借金』というよりは『支払い義務』ですから、債権者一覧表にこの支払い義務について書く必要はありません。
債権者一覧表に書くのは全ての借金。『支払い義務』とは違うから、そこだけは注意しておこう!個人からの借金もすべて書く必要があるよ1
ぴよぴよ(なるへそ)!
『債権者漏れ』があった場合は悪気の有無が左右する
では、この債権者一覧表に、もし『債権者漏れ』があった場合はどうなるでしょうか。
この場合、もし故意にそれをしてしまった場合、下記の記事に書いた様に、
『虚偽の申告』に該当するため、最悪の場合、詐欺再生罪として十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金です。これはやめておいた方がよさそうですね。
ただし、もし『故意ではない』ということなのであれば、取り返しはつきます。まあ基本的には全ての罪の考え方も、その本人に悪意が有ったか無かったかということは、罪の重さを決める大きな判断要因になりますからね。
人は誰もが失敗をします。その時に、それをすぐに認めて改めたなら、往々にして問題はそう複雑化せず、お咎めなしとなることが多いのが現実です。見るべきなのは以下の記事ですね。
ただし、ここでも『すぐに認めるべき』だと説いているように、この債権者漏れに関する申告についても、制限時間が用意されています。
失敗をすぐに認めることができる人は、賢者の名にふさわしい人だね!だから、正直言ってなかなかそういう人はいないよ!子供の頃にしっかりとしつけられた人くらいかなあ。
ぴよぴよ(難しいことっす)!
債権届出期間中に届け出を出せばいい
債権届出期間中です。この間に債権届出をすれば、何も問題ないでしょう。この債権届出期間等の具体的な詳細は、以下の記事をご覧ください。
簡単に説明すると、
- 債権者が異議を申し立てられる期間=債権届出期間(4週間)
- 債務者が異議を申し立てられる期間=一般異議申述期間(3週間)
- それに対して債権者が裁判所に調査委を依頼する期間=評価申立期限(3週間)
以上のような期間が存在するわけですね。このうち、債権届出期間中であれば債権者漏れに対する申告は十分間に合うとういことですね。
故意ではない場合、債権届出期間中にもう一度届出を出せばいいんだね!まあ、弁護士に依頼していればこういうことはないし、あったとしてもその期間中にすべてやってくれるよ!
ぴよぴよ(安心っす)!
追完とは
更に厳密に言えば、『追完』と言われる仕組みを利用すれば、債権届出期間に間に合わなかった場合でも、書面決議の開始前であれば、一定条件を満たすことで裁判所に債権届出を提出することができます。
民事再生法第95条にはこうあります。
再生債権者がその責めに帰することができない事由によって債権届出期間内に届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、その届出の追完をすることができる。
2 前項に定める届出の追完の期間は、伸長し、又は短縮することができない。
3 債権届出期間経過後に生じた再生債権については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、届出をしなければならない。
4 第一項及び第三項の届出は、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、することができない。
5 第一項、第二項及び前項の規定は、再生債権者が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の再生債権者の利益を害すべき変更を加える場合について準用する。
これが届出の追完についての説明ですね。
- その事由が消滅した1ヵ月以内であること
- 再生計画案を決議に付する旨の決定がされる前であること
- 債権者が故意や過失ではないこと
がその一定の条件です。
もし、この書面決議に間に合わなかった場合、つまり、債権者漏れに気づくのが遅かったか、あるいは申告がそこまで遅れてしまった、という状況になった場合は、債権届出はすることは出来ません。
しかし、そうなったからといって、そのことで必ず詐欺再生罪に問われるということはありません。詐欺再生罪に問われるのは、あくまでも故意に、あるいは悪意を持って債権を隠匿したという事実があったときです。もし本当に債権者漏れに気づかなかっただけだったということであれば、
悪意はなかった。
と判断され、罪に問われることはありません。
もし債権届出期間に間に合わなければ、追完があるんだね!このあたりのことも一人で覚えるっていうよりは、弁護士に依頼して対処してもらった方が確実だと思うよ!
ぴよぴよ(たしかに)!
無届債権扱いになると損をする
では、この場合、漏れてしまった債権についてはどう扱うのでしょうか。この場合、この債券は『無届債権』として扱われることになります。文字通り、『届出されなかった債権』ですね。
この無届債権に関しても、後で発覚した場合、個人再生によって減額されます。再生計画に従い、他の債権と同様に支払っていくことになります。
こうした無届債権が発生することに何か問題はないのかというと、きちんと減額されるわけだから一見すると何もないように見えますが、実際は微妙にあります。
例えば、債権者一覧表にて書きだされた債権を、全債権だと思って計算したとき、それの合計が400万円だったとします。個人再生の最低弁済額基準は以下の通りですね。
個人再生の最低弁済額基準:
- 債務総額が100万円未満の場合:債務総額
- 債務総額が100万円以上500万円以下の場合:100万円
- 債務総額が500万円を超え1500万円以下の場合:5分の1
- 債務総額が1,500万円を超え3,000万円以下の場合:300万円
- 債務総額が3,000万円以上5,000万円以下の場合:10分の1
返済しなければならない金額
100万円未満 | 100万円以上500万円以下 | 500万円を超え1500万円以下 | 1500万円を超え3000万円以下 | 3,000万円以上5,000万円以下 |
---|---|---|---|---|
債務総額 | ¥100万 | 5分の1 | ¥300万 | 10分の1 |
400万円の借金がある人は、100万円に減額してもらえるということですね。しかし、後で無届債権が50万円発覚した場合、本当は450万円だったわけですから、
計算
450万円÷5=90万円
で、90万円です。この2つの免除率を計算すると、
計算
400万円→100万円=75%
450万円→90万円=80%
で、5%の損をすることになります。450万円で届出を出していた方が、5%免除することができたのです。それはつまり、
計算
450万円×5%=22.5万円
を意味しますから、余計に22.5万円多く支払うことになるということですね。無届債権は、この場合では先に400万円で計算した再生計画案と、別で後から計算をして減額をするので、こういうことが起こり得るのです。
無届債権扱いになってしまうと、結果的に少し支払う金額が多くなっちゃうから注意が必要だよ!だから債権届出期間中に届け出をして、あるいは追完を利用するのが賢明!
ぴよぴよ(なるへそ)!
無届債権は再生計画で定めた方法で弁済することが原則
しかし、上記の表で見ると、『100万円未満は、債務総額が免除される』とありますね。ですからこの場合、もし別で後から計算をするなら、
- 400万円→100万円
- 50万円→0円
になって、結局こっちの方が得をするという計算ができてしまいます。しかし、もちろんこういう場合における対処法も考えていて、無届債権として後から発覚した債権の場合は、再生計画で定めた方法で弁済することが原則となっています。往々にして再生計画には、
『元本及び開始決定日までの利息・損害金の80%相当額について免除を受ける』
といったように、免除される%について記載するものです。ですからこの場合、
計算
50万円×80%=40万円
ですので、その40万円を免除してもらい、残りの10万円を毎月、および3カ月に一度支払っていくということになるわけですね。
最低弁済額基準では、『100万円未満は、債務総額が免除される』からね!だけどこの場合は少し扱い方が違うってことさ!
ぴよぴよ(うーむ)!
劣後化とは
また、この無届債権は原則として、『劣後化』の扱いを受けます。劣後化というのは文字通り、『本体とは少し扱いを低くするよ』ということですね。
つまり、劣後化されたらその債権は、『再生計画で定められた弁済期間が満了するまでの間』は弁済が禁止される『劣後債権』になってしまいます。債権届がなかった債権は『再生債権ではない』と判断されるからですね。
つまり、今毎月、および3カ月に一度支払っていくと書きましたが、この支払いは、最初に申告したその『400万円→100万円』の方の支払いが終わった後、つまり、3~5年の返済が終わった後に、返済をしていかなければなりません。
つまり、この無届債権扱いされた債権者は、債務者が届け出なかったというだけの理由で、3~5年の間、一切の返済を受けられないのです。
だけどこれは債権者にとっては理不尽ですね。従って、もし債権者に落ち度がなく、債務者の責任で無届債権となってしまった場合は、劣後化されないことになっています。
『劣後化』の扱いを受けると、優先順位を下げられるんだね!扱いも低くなる!だけど債権者からすればそれで支払いが滞るのは理不尽だから、対策があるってことだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!