個人再生をする前に車や不動産を譲渡したり名義変更をするとどうなる?
そもそも、なぜ個人再生前にそれを行う必要があったのか。ということが追及されます。もし、資産隠しの意味合いでそれをしていた場合は詐欺再生罪となり、そうなると最悪の場合、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金です。
個人再生には『住宅ローン特則』がありますので、もし不動産を守りたいということでそうするのであれば、間違った選択肢を選んでいることになります。
車や不動産を譲渡したり名義変更をすることに、もし悪意がない場合でも、味方によっては資産隠しになるから注意が必要だよ!詳しく解説するね!
ぴよ
Contents
詐欺再生罪に該当する行為をしてはならない
個人再生の前に新たな借り入れをしてはいけないということは、下記の記事に書きました。
その行為は詐欺再生罪に該当するか、そうでなくても不誠実な動機があれば、厳しい目を向けられることになります。
では、個人再生前に、
- 車や不動産の名義変更をする
- 口座の預金を誰かの口座に移す
- 保険の名義を誰かに変更する
- 特定の債権者にのみ返済する
ということをするのはどうでしょうか。それも同じ考え方が適用されます。
もし悪気がなくても、詐欺再生罪というものがあって、それを睨む考え方がある以上、疑われるようなことはしないほうがいいっていうことだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
『清算価値』を故意に操作しようとすると…
そもそも、なぜ個人再生前にそれを行う必要があったのか。ということが追及されます。まず、個人再生には、
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生手続き
があります。
『小規模個人再生』であれば、
- 最低弁済額基準
- 清算価値
のどちらか高い金額が、最低限返済しなければならない金額になります。
『給与所得者等再生手続き』であれば、
- 最低弁済額基準
- 清算価値
- 可処分所得の2年分
の3つの内で、最も高い金額を返済しなければなりません。詳しくは下記の記事に書きました。
記事を見ればわかりますが、この『清算価値』を故意に操作しようとする意図があると判断された場合は、場合によっては詐欺再生罪となります。
民事再生法第255条にはこうあります。
再生手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者について再生手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、再生手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2 前項に規定するもののほか、債務者について管理命令又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
つまり、
車や不動産があると、清算価値が高くなって、返済金額が高くなるから、それを手続きの前に誰かに名義変更して保持してもらって、財産をキープしながら、返済金も減額させよう!
という悪だくみがあると、それが突き止められた場合は詐欺再生罪となるということですね。そうなると最悪の場合、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金です。つまり、返済金額も高く支払い、そのうえ罰金を支払うわけですから、踏んだり蹴ったりです。逮捕になるなら尚のことですね。
更に下記の記事も併せてご確認ください。
清算価値の高い物を所有していると、債権者に支払う額が大きくなるからね!それを操作するためにその行為を行うことがわかれば、詐欺再生罪に問われるよ!
ぴよぴよ(うーむ)!
財産の隠匿に注意
下記の記事に財産目録について書きましたが、
財産目録には、
等を書くわけです。その財産目録に、その名義変更した車や不動産の詳細について書く必要があります。個人再生では、再生の直前に行った財産の処分、譲渡は、裁判所に申告しなければなりません。
そして、誰かに名義を変更していた場合は、『しかし、清算価値の計算上としては、まだ債務者が保有している』と判断し、その分の金額を清算価値に上乗せします。
- 車=100万円
- 不動産=500万円
だった場合、600万円を上乗せするわけですね。ですから、清算価値を低くする目的で財産を隠匿しようとし、個人再生の直前に財産を誰かに名義変更させても、意味がないということになります。むしろリスクが大きすぎるので、やめた方がいいですね。
裁判所もばかじゃないから、個人再生の直前に行われた行為というのは、すべて申告しなければならないよ!そうすると悪だくみをしようとする人は、ここで淘汰されるね!
ぴよぴよ(うーむ)!
否認権を行使できるのは監督委員だけ
また、自己破産の記事に『否認権』について書きました。
『否認権』とは、こうした債務者の『債権者の配当を減らそうとする行動の効力を否定する権利』ですね。
- 債権者に財産を隠す
- 特定の債権者にだけ支払いをする
- その他捏造、隠蔽、妨害をする
という行動を、否定する権利ということですね。
では、今回のようなケースでもこの否認権によって取引や譲渡行為を取り消しにすることができるかということ、これは複雑ですが、そうはならないのです。
確かに、民事再生法第127条にはこうあります。
次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
一 再生債務者が再生債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二 再生債務者が支払の停止又は再生手続開始、破産手続開始若しくは特別清算開始の申立てがあった後にした再生債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び再生債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 再生債務者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは、再生手続開始後、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り、再生債務者財産のために否認することができる。
3 再生債務者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
否認権が行使できるという法律ですね。しかしこの否認権が行使できるのは、『監督委員』です。民事再生には、
- 個人再生委員
- 監督委員
があります。個人再生委員については、下記の記事に書きました。
個人再生とは、民事再生のうちの個人の手続きであり、つまりもう一つ、『法人』の手続きもあります。その法人の民事再生のときには、個人再生委員ではなく、『監督委員』が選任されます。
個人再生委員は、大体15~30万円あたりが相場となります。ですが、監督委員は、5,000万円以下の負債の場合は、大体200万円あたりが相場です。
つまり、個人再生の場合は、監督委員を用意すると費用が高くなりすぎるので、個人再生用に特化した個人再生委員を選任するわけですね。
民事再生法第56条にはこうあります。
再生手続開始の決定があった場合には、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員に対して、特定の行為について否認権を行使する権限を付与することができる。
ですから、個人再生手続きの際において、否認権が行使できるのは『監督委員』だけ。つまり、法人の民事再生の場合でしか、これが該当されないんです。
ですから、個人再生においてこのようなケースが発生したら、
- 自己破産
- 法人の民事再生
のように、否認権によってその取引や譲渡行為を取り消しにすることはできません。個人再生では、手続きの簡略化、スピード化のために否認権の適用が除外されているからです。
ですから、『否認権によって取り消しになる』わけではありませんが、その代わり、清算価値に上乗せするということでそこのつじつまを合わせるわけですね。
民事再生=監督委員。個人再生=個人再生委員だね!もともとは民事再生と監督委員が基本軸だから、それの簡略版として個人再生と個人再生委員が存在するんだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
住宅ローン特則で住宅を守ることができる
確かに、個人再生は任意整理と違って、自動車ローンがある場合はそれも整理の対象となり、車を引き揚げられてしまうことになります。
しかし、ローンを支払い終わった車なら引き揚げられませんし、清算価値の低い車であればわざわざそんなことをしなくても支払額には影響ありません。
また、住宅ローンであれば、下記の記事に書いた様に、
住宅ローン特則によって住宅を守ることができますので、もし名義変更の理由が財産隠匿というよりは『手放したくなかった』ということであれば、基本的な知識を学び直すことが大切です。
住宅ローン特則で住宅を守ることができるのを知らなかった場合は、これで問題は解決だね!そうじゃない人も、この知識を入れておくことはためになるよね!
ぴよぴよ(たしかに)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!