個人再生で『異議の留保』にチェックをするとどうなるの?
債権者一覧表に、異議の留保についてのチェックボックスがありますので、ここにチェックをすると、債務者は『債権者からの異議に対する異議の申し立て』が出来ます。債務者がその『異議を受けての異議申し立て』をする為に用意された期間のことを、一般異議申述期間と言います。
つまり、異議の留保にチェックを入れれば、一般異議申述期間の間に『債権者からの異議』に対する異議の申し立てができるんだね!異議の異議だ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
意義の留保と一般意義申述期間
個人再生には、
- 異議の留保
- 一般異議申述期間
というものがあります。まずこれを簡単に覚えましょう。
- 異議の留保=債権者から異議を申し立てられた場合に、逆にそれに異議を申し立てるための意志表明
- 一般異議申述期間=債務者がその『異議を受けての異議申し立て』をする為に用意された期間
ですね。
下記の記事に書いた様に、
個人再生には、
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生手続き
の2種類があります。
このうち給与所得者等再生手続きの場合は、多くの金額を支払うことによって、再生計画において債権者の合意を得ずに手続きを進められるメリットがあります。
しかし、小規模個人再生においては、支払う金額を抑えられる代わりに、債権者の過半数、債権額の過半数の借入先の反対があった場合は、手続きを進めることができません。
再生計画案は、債務者がまず一方的に決めますから、それに合意できるかどうか、債権者側にも当然確認をする必要があります。ですから、債権者は再生計画案、債権者一覧表に記載された返済額に対して、異議を申し立てる権利を持っているということですね。しかし、債務者側も『その異議に異議を申し立てる権利』を持っているということです。
よく裁判で、
異議あり!
とか、
意義を認めます!
なんていうやり取りが、検事、弁護士、裁判官の間で行われている光景を見ると思いますが、あのようなイメージで、お互いが正当だと思っている意見を主張するということですね。
そして、もし話が決着しない場合は、最終的には裁判所が決めます。これも、裁判のそれと様子がよく似ていますね。厳密には、個人再生の場合は個人再生委員が『債権調査』によって正しい債権額について判断をします。そして、その調査結果をもとに裁判所が判断をするということです。
個人再生委員が裁判所に与える影響はとても大きいので、最終的に判断した個人再生委員の意見には逆らえないと言えるでしょう。
債権者は異議を申し立てられる。だけど債務者も、その異議に異議を申し立てられる。それを実行するためには条件があるってことだね!
ぴよぴよ(異議の異議に意義がいぎいぎ…)…
意義の留保にチェックを入れることが必須
の記事に書いた様に、個人再生
- 1.申立書
- 2.収入および主要財産一覧表
- 3.債権者一覧表
- 4.陳述書
そのうちの『債権者一覧表』に、この『異議の留保』についてのチェックボックスがありますので、ここにチェックをすると、債務者は『債権者からの異議に対する異議の申し立て』が出来るということになります。
債権者のその異議申し立ての為に必要となる書類は、『再生債権届出書』と言います。債権者は、債務者が出したその債権者一覧表にある債権額について、異議がある場合は、再生債権届出書を提出する必要があるわけですね。また、その再生債権届出書を出すのにも期間が定められていて、それを『債権届出期間』と言います。
- 債権者が異議を申し立てられる期間=債権届出期間
- 債務者が異議を申し立てられる期間=一般異議申述期間
ということですね。また、その次にもう一つ覚えることがあって、それが『評価申し立て』です。これは、債務者がその一般異議申述期間の間に異議を申し立てた場合、今度は更に、債権者がその債務者が出した債権額に対する調査を、裁判所に依頼できます。
そして、その評価申し立てができる期限のことを、 『評価申立期限』と言います。従ってもう一度まとめると、
- 債権者が異議を申し立てられる期間=債権届出期間(4週間)
- 債務者が異議を申し立てられる期間=一般異議申述期間(3週間)
- それに対して債権者が裁判所に調査委を依頼する期間=評価申立期限(3週間)
となるわけですね。
この辺はややこしいような気もするけど、まあそう難しく考える必要はないね!簡単にまとめておけば、いつでもすぐわかるようになるよ!
ぴよぴよ(簡潔版をメモしておくっす)!
具体的に説明するとこうなる
ですからもう一度専門的にこの話をまとめると、
『債務者は個人再生の際、申立書と同時に債権者一覧表を提出する。しかし、債権者がその債権者一覧表に書かれた債権額に納得がいかない場合は、債権届出期間の間に再生債権届出書を提出することができる。
しかし、債務者は、債権者一覧表に書かれた異議の留保にチェックを入れていれば、一般異議申述期間の間に、更にその異議に異議を申し立てることができる。
だが、債権者は更にその後、その債務者が主張する債権額の調査として、評価申立期限の間に裁判所に債権の評価申し立てができる。
もしそれでも話がまとまらない場合は、個人再生委員が債権調査によって正当な債権額の判断をする。個人再生委員が裁判所に与える影響は大きく、これに逆らうことはできない。そして最終的に裁判所が、債務者が支払うべき金額を決定する。』
ということになりますね。専門用語さえ覚えてしまえば簡単な話ですね。お互いに自分が正当だと思う意見を主張しあって、折り合いをつける、というだけの話です。
評価申し立てについては、下記の記事に書きました。
民事再生法第222条にはこうあります。
小規模個人再生においては、裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、債権届出期間のほか、届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間をも定めなければならない。この場合においては、一般調査期間を定めることを要しない。
2 裁判所は、再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、再生手続開始の決定の主文、債権届出期間及び前項に規定する届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「一般異議申述期間」という。)を公告しなければならない。
また、異議の留保にチェックを入れていないと、債務者は再生債権届出書に異議を申し立てることができません。また、個人再生手続きの開始が決定してからも異議を申し立てることができませんので、注意が必要です。あくまでも書類提出の段階でこの主張をすることが求められています。
お互いが意見を主張して、折り合いがつくまで交渉するっていうことだね!そのラリーの回数と、するための条件が定められているっていうわけだ!最後には裁判所が決めるよ!
ぴよぴよ(なるへそ)!
支払額のトラブルが多い事実が背景にある
こうした異議申し立ての機会が用意されているというのは、ただ単にお互いの権利が守られているというだけではなく、実際に債務者と債権者の間でこうした支払額に関するトラブルが多いからです。
例えば、任意整理でも取引履歴の開示を請求て、
- 今までに借りた金額
- いついくら返済したのか
を調べ上げ、その明細履歴を参考にし、利息の引き直し計算を行います。それについての詳細は下記の記事にも書きました。
この利息の引き直し計算に関しては、個人再生でも行います。これによって、過払い金があるかどうか等が判明し、もしそれがあるなら過払い請求ができるわけです。つまり、過払い金があった場合は過払い金が請求できるか、あるいは今後支払う金額が減ることになります。
この辺りの計算をする際に、債務者が再生計画案を出す時点で、支払うべき金額が完全に明確になっていない場合があります。また、債権者としても、その指定された金額に納得がいかない場合があります。お互いが計算をしていて、自分たちが正しい意見を持っていると思うわけですね。
例えば債務者側からすれば、その時に記入した額が、本来返済すべき金額より多くなる可能性もあります。そのときに、異議の留保にチェックを入れておけば、後で金額がきちんと判明したとき、その金額について異議を申し立てることができるわけです。
そうした面から考えても、このお互いの異議の主張が出来る権利というのは、正当なものであると判断できますね。
また、その他にも個人再生が棄却、廃止、否決、不認可、取り消しとなるケース等を下記の記事に書きました。
この制度を用意することで、お互いのモヤモヤした気持ちを可能な限り解消させることができるわけだね!債務整理で大事なのは『和解』だから、こういう仕組みがあるんだね!
ぴよぴよ(うーむ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!