個人再生の住宅ローン特則で住宅を残しても、清算価値保障の原則があるから、不動産の時価評価額が高いなら任意売却をしたほうがいい?
はい。そういうことになります。清算価値保障の原則によって、『売ると高い家』を持っていた場合は、返済金額が増えてしまいます。したがって、どうせ『売ると高い家』を持っているなら、任意売却で売ってしまいお金に換えて、そのお金で返済したほうがいいかもしれません。
清算価値保障の原則があるから、『売るとお金になる物』がある場合は、高い返済金を支払う義務が出るからね!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
Contents
個人再生の住宅ローン特則とは
個人再生には、
- 小規模個人再生
- 給与所得者等の再生
があり、いずれも債務の弁済率と分割払いの方法を定めた再生計画案を作成して裁判所の認可を得る手続きです。
『金銭貸借の知識とQ&A』にはこうあります。
民事再生では、 租税等はカットされない等の短所がありますが、住宅ローンを負担している人は、住宅を維持しながら住宅ローン以外の債権を一部カットして分割払い(支払い期間3~5年間)の債務整理が出来るという長所があります。ちなみに、負債総額が5,000万円を超える場合には、個人再生は使えません。
また、民事再生手続きにおいて住宅ローンに関する特則が認められるのは、あくまで支払いの猶予のみです。ローン額の減額は一切認められません。これまで支払いを延滞していた元本、利息、遅延損害金のすべてを本来のローン額に上乗せして、分割で支払っていくことになります。
通常なら任意整理とは違って、全ての債権を対象にしなければならないところ、『住宅ローン特則』によって、その住宅ローンを整理の対象から外すことができるということなんですね。
『あなたを借金返済から解放する方法』にはこうあります。
住宅ローン特則(家を手放さずに返済し続けることが可能)
制度の概略
民事再生には『住宅ローン(住宅資金貸付債権)特則』という制度があり、小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれの手続きでも利用することができます。通常、住宅ローンを抱えている人には住宅そのものに抵当権がつけられ、ローンの返済が困難になった場合、抵当権者は住宅を競売にかけて優先的に支払いを受けることができます。その場合、債務者は立ち退きを要求されます。
しかし、この民事再生の住宅ローン特則を再生計画案に盛り込めば、再生計画に合わせて競売を猶予してもらうことができ、さらにローン返済期間の延長を認めてもらうことで、住宅を手放さずにローンを返済し続けながら再生を進めることが可能になるのです。
この場合、住宅ローン自体の減額は利息の減免はないため、他の借金を減額させてローンを払い続けることになります。ただし、延長の上限は10年であり、しかも最後の支払いが70歳を超えることはできません。この特則の利用についても債権者の同意は必要ありません。
また、借金を5分の1程度にまで減額できるのも個人再生のメリットの一つです。任意整理ではそういうことはできませんから、かなり助かりますね。
だから例えば、住宅以外はダメなんだ!自動車ローンとか、保証人付き債務とか、そういうものは整理の対象であり、担保物件に影響を及ぼしてしまうよ!
ぴよぴよ(うーむ)!
最低弁済額基準とは
さて、上に挙げた『小規模個人再生』は、
- 最低弁済額基準
- 清算価値
のどちらか高い金額が、最低限返済しなければならない金額になります。
まずは『最低弁済額基準』を見てみましょう。
個人再生の最低弁済額基準:
- 債務総額が100万円未満の場合:債務総額
- 債務総額が100万円以上500万円以下の場合:100万円
- 債務総額が500万円を超え1500万円以下の場合:5分の1
- 債務総額が1,500万円を超え3,000万円以下の場合:300万円
- 債務総額が3,000万円以上5,000万円以下の場合:10分の1
返済しなければならない金額
100万円未満 | 100万円以上500万円以下 | 500万円を超え1500万円以下 | 1500万円を超え3000万円以下 | 3,000万円以上5,000万円以下 |
---|---|---|---|---|
債務総額 | ¥100万 | 5分の1 | ¥300万 | 10分の1 |
ですから500万円の借金がある人は、100万円に減額してもらえるということですね。これを3年で返済することになりますから、
100万円÷36ヵ月=27,777円
で、毎月2.8万円の支払いをしていく計算になります。(弁護士費用の分割払いがある場合はそこにプラスされます)
- 『500万円の最低弁済額基準=100万円』
最低弁済額基準は決められたものだから、自分の借金額と照らし合わせて、どれに該当するかということをチェックすればいいんだね!
ぴよ(ふむ)!
清算価値保証の原則とは
財産には様々なものがあります。
- 不動産
- 車
- 高級時計
- 有価証券
等ですね。自己破産の場合は、
- 換価20万円以下の財産
- 生活に必要最低限の家財道具
- 99万円以下の現金
以外の財産は、全て処分し、お金に換え、債権者に配当することになります。その代り、破産者は全ての借金を帳消しにするわけですね。
これらの財産を配当するために換価する評価額を『清算価値』と言います。 個人再生では『清算価値保障の原則』により、債権者に渡る配当金が自己破産よりも低くなってはならないと定めています。
例えば自己破産で財産をすべて売って、300万円のお金が作れたというとき、もちろんそのお金を債権者に配当して、借金の返済に充てるわけですが、個人再生の場合、その300万円以上の金額を配当しなければなりません。
- 自己破産→300万円
- 個人再生→300万円以上
もしこの金額以下の配当金しか用意できない場合は、裁判所は再生計画を取り消すことが可能になります。
冷静に考えて、自己破産なら住宅も車も手放して借金を帳消しにするわけなのに、個人再生になると、住宅ローン特則で住宅を手元に残しておきながら、しかも借金を5分の1にするということは、債権者からすると納得のいくことではありません。従って、
せめて個人再生で借金を減額する場合は、最低弁済額基準と清算価値のどちらか高い方を返済していき、その際、自己破産をしたときに配当する返済金以上の金額を支払うようにしなさい!
という話になっているわけですね。
自己破産をすると債務者が文無し状態になるけど、そういう状態に転落すること自体が、債権者に対する礼儀でもあるんだ!個人再生でも同じように考えるよ!
ぴよぴよ(お金があるのに減額だけは無りっす)!
400万円の車を持っていた場合
例えば高級外車を所有していて、その清算価値が400万円だった場合は、400万円以上を返済しなければならなくなります。そうしないと、
だって車を売れば400万円になるでしょ。売らないで個人再生をするんだったら、清算価値で計算して400万円以上は最低でも用意しないと。それを返済すれば債権者も納得するだろうけど、それ以下の金額を返済したって納得しないでしょ。
ということになるわけです。従って、そのような再生計画は却下されるか、あるいは車を処分する必要が出て来るわけですね。
また、仮に返済する額が『350万円』となった場合、先ほどの最低弁済額基準額で『500万円が100万円になる』という計算をしましたから、
- 最低弁済額基準:100万円
- 清算価値:350万円
ということで、清算価値の方が高いので、350万円を3年で返済することになるわけですね。
350万円÷36ヵ月=97,222円
350万円÷60ヵ月=58,333円
です。3年なら月々9.7万円、5年なら6万円ですね。結構な額です。しかし、元々500万円あった借金が150万円減額出来て350万円になり、それを3年から5年で分割できるようになったわけですから、場合によってはかなり助かる結果になることもあります。
全体で500万円の清算価値があると判断されれば、500万円以上だね!全部売ったお金よりも高い金額を支払う必要があるっていうことだ!
ぴよぴよ(ふむふむ)!
オーバーローンとアンダーローン
では次に、オーバーローンとアンダーローンについて考えていきましょう。例えば、5,000万円の不動産があったとして、実際の不動産評価額(売却査定額)が4,000万円だとしたら、家を売却したとしても1,000万円の赤字です。これをオーバーローンと言います。
- オーバーローン=不動産評価額が住宅ローンより低い
- アンダーローン=不動産評価額が住宅ローンより高い
5,000万円の不動産で、実際の不動産評価額が6,000万円だとしたら、アンダーローンですね。これなら家を売却してローンを支払っても、手元に1,000万円残ります。
オーバーローンであれば、清算価値がないと判断されますね。売ってもマイナスにしかならないわけですから。しかしアンダーローンであれば住宅ローンの支払い額が不動産評価額を下回っていて、不動産を売ればお金が入るわけですから、清算価値があると判断されます。売ったらプラスになるということですね。つまりこうなると、『資産を持っている』と判断されるわけです。
オーバーローンであれば清算価値はない。アンダーローンであれば清算価値はある。清算価値があれば、それ以上の金額を支払うんだ!
ぴよぴよ(うーむ)!
不動産の時価評価額が高い場合はどうしたらいい?
では、住宅ローン以外の債務が500万円で計算したとき、最低弁済額基準は100万円だと言いました。そして、不動産の時価評価額が5,000万円で、住宅ローンの残りの債務が4,000万円である場合、資産の評価である清算価値は1,000万円です。
- 最低弁済額基準=100万円
- 清算価値=1,000万円
で、1,000万円の方を選ばなければなりません。これを3年か5年で支払うとなると、
1,000万円÷36ヵ月=277,777円
1,000万円÷60ヵ月=166,666円
つまり毎月の支払額は、3年なら28万円、5年なら17万円ずつ支払わなければならず、なかなかハードルの高い支払いになります。
こういう場合は、もうその不動産を任意売却で売ってしまって1,000万円の現金を作り、それで借金を清算していくか、それでも支払いが難しい場合は自己破産を検討することになります。まあ、上の計算では500万円の借金だったわけですから、1,000万円あれば全て完済できますね。
不動産の時価評価額が高い場合は単純にそれを喜んで、『よっしゃ、1,000万円で売れるぞ!これで借金が返せる!』とかって考えればいいんだね!
ぴよぴよ(なるへそ)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!