債務者に有利な計算方式は利息充当方式?棚上げ方式?
債務者に有利な過払い金の計算方式は『利息充当方式』です。利息充当方式の方がわずかに多い支払金額になります。従って、一部の貸金業者は、より過払い金の金額が小さくなる棚上げ方式(または非利息充当方式)で計算すべき、という主張をするようになりました。
しかし、その金額はほんのわずかです。債権者としては、『塵も積もれば山となる』ということで、少しでも支払いを減らすよう、抵抗をするわけです。
利息充当方式と棚上げ方式は、計算をしても正直そんなに差はでないよ!ただ、塵も積もれば山となるからね!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
過払い金返還までの流れ
下記の記事に書いた様に、過払い金の返還を渋る貸金業者というものは存在します。
このような業者の場合、とにかく債務者の交渉に応じようとしません。下記の記事に書いた様に、
過払い金返還請求の流れをまとめるとこうなります。
- 1.弁護士に依頼する
- 2.貸金業者へ取引履歴開示請求する
a.開示に応じたら
- 3.利息制限法による引き直し計算をする
- 4.貸金業者への過払い金の返還請求をする
- 5.業者と交渉をする
- 6.交渉の成立不成立が決まる
b.開示に応じなかったら
- 3.再請求をする
c.それでも開示に応じなかったら
- 4.行政指導・行政処分申告書を送付する
d.それでも開示に応じなかったら
- 5.訴訟を起こす
まずこの段階で、取引履歴の開示に応じないという抵抗をするんですね。その後、冒頭にリンクした記事にもあるように、裁判にまでもつれこませ反論し、抵抗してきます。
裁判の流れをざっと説明するとこうなります。
- 1.訴状提出
- 2.第1回裁判日 訴状陳述・答弁書陳述
- 3.和解話し合い
a.和解が成立したら
- 4.和解調書作成
- 5.過払い金返還
b.和解が不成立だったら
- 4.繰り返し裁判
- 5.結審・判決
- 6.確定
- 7.過払い金返還
このようにして、
- 取引履歴の開示に応じない
- 和解しようとしない
という抵抗を見せることからもわかるように、貸金業者は出来るだけ過払い金を払いたくないんですね。
にも書いた、『クレジット/ローン業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』にある、
貸金業者にとっていちばん重要な法律はこれまで、貸出上限金利を規定する出資法と過度な営業行為を規制する貸金業規制法でした。しかし近年、出資法と利息制限法との金利差(グレーゾーン金利)で生じた返済金に対する『過払い金請求』が相次ぎ、貸金業者の経営を圧迫していました。
を見れば、その理由がわかりますね。単純に、それを支払うと会社が傾くんです。ですから貸金業者は、
- 出来るだけ過払い金を払いたくない
- 出来るだけ支払う過払い金を安く抑えたい
わけです。
そこで、一部の貸金業者は、より過払い金の金額が小さくなる棚上げ方式(または非利息充当方式)で計算すべき、という主張をするようになりました。
過払い金は貸金業者にとってダメージだからね!少しでもいいから部分の最適化をして、全体のダメージを軽減するという対策をとったわけだね!
ぴよぴよ(うーむ)!
利息充当方式と棚上げ方式
棚上げ方式とは、『利息と元本を別に計算する方法』で、利息充当方式とは、『借り入れや債務に対して過払い金の元本よりも先に利息を充当する計算方法』です。
例えば、100万円の過払い金があった場合、そこにつけられる利息は5%ですので、105万円となります。過払い金の金利については、下記の記事に詳細を書きました。過払い金の利息は5%です。
このままだと105万円の請求ができますね。しかし、債務者が新規借り入れとして、『一年後に20万円新たに借り入れ』していた場合、貸金業者はそれを差し引いた金額を返金してくることになります。この計算をするときの方法が、
- 利息充当方式
- 棚上げ方式
の2つがあるということです。
一度覚えちゃったらなんてことない計算方法だよ!最初はなんかめんどくさい気がするけどね!
ぴよぴよ(たしかに)!
棚上げ方式
棚上げ方式の場合、まずこう計算します。
100万円(過払い元金)-20万円(新規借り入れ)=80万円(過払い元金)
5万円(金利)を『棚上げ』して、別枠で計算します。そして、新たに一年後、20万円借りたわけですから、過払い元金は一時80万円になります。
その80万円に、新たに二年目の金利の5%を付け加えます。すると、
80万円×5%=4万円
になります。すると、
5万円(棚上げしたあった一年目の金利)+4万円(元金80万円に対してかかる二年目の金利)=9万円
80万円(過払い元金)+9万円(金利合計)=89万円
ですから、棚上げ方式の計算方法では、89万円の過払い金になるわけです。
単純に、『棚上げ』をして計算をするっていうことだね!難しく考える必要はないよ!
ぴよ(ふむ)!
利息充当方式
一方、利息充当方式は、『借り入れや債務に対して過払い金の元本よりも先に利息を充当する計算方法』です。
100万円(過払い元金)+5万円(一年目の金利)-20万円(新規借り入れ)=85万円(過払い元金)
つまり、『元本よりも先に利息を充当』するわけですから、棚上げ方式のように、一年目の金利である5万円を棚上げせず、まず、ここからその新たな借り入れ分の20万円を充当します。
85万円(過払い元金)=元金85万円:利息0円
ですね。棚上げ方式の場合は、
80万円(過払い元金)=元金80万円
(+棚上げされていた利息:5万円)
で、利息5万円は棚上げされていましたから、消滅していませんでした。利息充当方式では、利息分から先に充当するので、新しく借り入れた場合は利息がまず最初に消えることになります。
過払い元金は、85万円になりました。そしてそこに、二年目の金利の5%だけがつきます。
85万円×5%=42,500円
85万円+42,500円=892,500円
892,500円ですね。それが支払う過払い金の合計になるわけです。
- 棚上げ方式:890,000円
- 利息充当方式:892,500円
ということで、利息充当方式の方がわずかに多い支払金額になります。従って、一部の貸金業者は、より過払い金の金額が小さくなる棚上げ方式(または非利息充当方式)で計算すべき、という主張をするようになりました。
このように、利息充当方式の方がわずかに多い支払金額になるから、債務者にとって有利なのは利息充当方式!そして債権者は、棚上げ方式を主張するんだね!
ぴよぴよ(うーむ)!
債務者に有利な過払い金の計算方式は『利息充当方式』
今回のテーマは、債務者に有利な過払い金の計算方式ですから、その答えは『利息充当方式』ということになります。
まあ、こうして見ても双方の金額の違いはわずかなものですから、わずかな抵抗ということになりますね。しかし、結局最後にはどうせ債権者が負けることになるのに、取引履歴の開示を断ったり、訴訟での和解に応じなかったりする事実があることからも、貸金業者としては少しでも抵抗をしたいんですね。
ただ、この計算の場合は『2年』で計算しましたが、このやり取りが長引けば長引くほど差額は大きくなります。ですから、10万円でも20万円でも、一人一人の債務者が何件も積み重ねれば大金になりますから、貸金業者としてはここで少しでも抵抗して、体力の消耗を阻止したいと考えるんですね。
ただし、平成25年4月の最高裁判決で、『特段の事情がない限り、原則として利息充当方式での計算方法を認める』という判断が下されています。2013年ということですから、それ以降の計算方法では、もう利息充当方式を原則として考えることになっています。
第三者から見ると、少しでも抵抗をする姿はなんか無様だね!最初に利益にしがみついていて、それが原因でこういうことが起こって、その後始末に言い訳をして抵抗してって、人間として醜いね!
ぴよぴよ(たしかに)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!