債権者から給料を差し押さえられたときにはどうすればいい?
強制執行はやむを得ない手段です。債権者とて、最後の最後までそれを行使することはなかったはずです。ですから甘んじてそれを受け入れるのがまず一つの選択肢です。
ただ、給料の差し押さえは、債務整理によって停止することができます。個人再生と自己破産のどちらかを選択すればそれができますので、併せて検討してみましょう。
強制執行は最終的な措置だからね!だからそれまでに督促とかの段階で支払っておくべきだったんだ!詳しく解説するね!
ぴよぴよ(親分に任せれば大丈夫っす)!
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貸金業者は利息を取らないと利益が出ない
借金をして、その借金を返さなければ債権者は損をしてしまいます。そして債務者だけが得をします。例えば、100万円貸して、50万円返してもらった場合、債権者はまだ50万円損しています。そして、債務者は50万円分使っているので、得をしています。
100万円全て返して、ようやくプラスマイナスゼロです。それでは商売になりませんので、金融業者はそこに利息をつけます。例えば利息制限法の上限で考えると、
利息制限法の上限
元本額が10万円未満の借金 | 元本額が100万円未満の借金 | 元本額が100万円以上の借金 |
---|---|---|
年20%まで | 年18%まで | 年15%まで |
ですから、15%で、15万円の利息をつけることになります。
債権者は、115万円返してもらってはじめて利益を出し、商売が成り立つということになります。もちろん、1万円でも利益は出ていますが、これは法律で定められていることですので、15%まで取ることができるのです。
これでも、過去にあった『グレーゾーン金利問題』によって、再三再四、この金利については熟考されてきました。その上でこの金利なわけですから、これは最低限支払わなければならないお金ということになります。
しかし、その利息を支払わないどころか、元金すら返さないということになるとどうでしょうか。言った様にそれは、債務者だけが得をして、債権者が損をするということになり、理不尽な結果となります。
まずはこの決定的な事実を理解しよう!債権者はお金を渡した段階では、ただたんに損をしているだけだからね!しかも大金だよ!
ぴよぴよ(たしかに)!
担保や保証は債権者にとって有難い制度
ですから、そういうことがないように、『担保』や『保証』というものがあります。担保については下記の記事、
保証については下記の記事をご覧ください。
担保や保証があれば、もし債務者が支払えなくなったときに、その担保物件を売却してお金に換えて返済金に充てたり、保証人や保証会社に代わりに支払ってもらうことができるので、債権者としては安心ですよね。
また、担保や保証の他に、『差し押さえ』という考え方があります。担保や保証が『最初から約束していた』ことに対し、ここでいう差し押さえは、『約束はしていなかったが、訴訟によって強制執行をかける』ということを意味します。
今回考えるテーマは『給与の差し押さえ』ですね。もし債権者から給料を差し押さえられてしまった場合、どうしたらいいでしょうか。債権者としてはその権利を行使するのは当たり前だということは、今までの記事でわかりました。しかし、債務者としても事情があって支払えなくなったわけで、しかも給料を差し押さえられると生活できなくなるから、困ってしまいます。
差し押さえというのは最初はするつもりはなかったんだ!だけどするしかなくなった!ということは、債務者側がやっぱり何かしら問題があるよね!
ぴよぴよ(たしかに)!
給与の差し押さえはすぐには行われない
しかし、この給料の差し押さえは、支払いができなくなったらすぐに行われるわけではありません。まず、支払いが滞ると、債権者から、
- 督促状
- 催告書
- 差押予告通知書
等の通知が来ます。それでも支払いをしないでいると、受け取り拒否が出来ない特別送達が送られてきます。それには簡易裁判所を通して支払督促や少額訴訟の呼出状などが入っているんですね。詳細は下記の記事に書きました。
『債務名義』とは、この一連のやり取りの中で成立した書類です。この特別送達を受け取り、訴訟を受け入れ、支払額に納得をして和解したり、判決が出れば、債務の存在や金額の確定する公文書が作られます。それが『債務名義』となります。
債権差押命令なら送達から1週間以内に、仮執行宣言付き支払督促なら送達から2週間以内、その間に異議申し立てがなければ、債務名義に基づき強制執行が可能となるわけですね。
督促状の段階でしっかりと払うことが必要だよね!そうすれば問題は悪化しないから!
ぴよぴよ(たしかに)!
差し押さえられるのは給料の4分の1
ただし、下記の記事にも書いた様に、
差し押さえられるのは給料の4分の1と決まっています。ですから、差し押さえによって生活ができなくなるというわけではないので、その点については安心です。
民事執行法第152条にはこうあります。
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
ですから、もし25万円の給料をもらっている場合は、その4分の1の62,500円だけが差し押さえられ、残りの187,500円は差し押されられません。
ただし、給料の手取り額が44万円以上ある場合に限っては、その内の33万円は差し押さえが禁止されますが、それ以外は差し押さえが可能になります。例えば、50万円の手取り金額の場合は、
計算
500,000円-330,000円=170,000円
で、17万円が差し押さえの対象になります。
そうなんだ!結局強制執行で差し押さえと言っても、給料の4分の1だけだから、4分の3はしっかりと保持できるんだよね!
ぴよぴよ(ありがたいっす)!
差し押さえを理由に会社を首になる?
給料が実際に差し押さえられるとなると、裁判所から会社へ直接通達が届きます。そのため自分が借金をしていることや、支払いが滞っていることが会社側に知られてしまいます。しかし会社に通知がきて借金などの事情が知られてしまっても、そのことを理由にして解雇されることはありません。
これはその他の債務整理と同じで、それを理由に会社をクビにすることは『不当解雇』ですので、訴えることすらできます。
労働基準法第18条にはこうあります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする
また詳しくは、下記の記事に書きました。
しかし、なるべく会社には迷惑をかけたくないというのが、従業員としての本音ですよね。その為にはやはり、普段から借金の返済についてもっと自覚を持ち、支払い義務を果たすことに責任感を持つようにしましょう。
原則はね!だけど間接的に会社にいづらくなって、結果的に会社を辞めざるを得ないということもあるよ!
ぴよぴよ(たしかに)!
強制執行はやむを得ない手段
債権者としても、そのままでは損になってしまうということで、やむを得ず強制執行をするわけですからね。最初からそれをするわけではないわけです。あくまでも約束を破ったことにより、債務者が『期限の利益を喪失』したから、今度は債権者が権利を行使しているだけですからね。
期限の利益
債務者は、支払期日までに支払いを待ってもらう権利を持っている
例えば任意整理をしていて、和解案に合意したのに債務者が支払を怠り、期限の利益を喪失した場合は、債務者は一括請求を受けます。
ただ、記事にも書いた様に裁判所を介さない任意整理での和解書は、それだけでは『債務名義』とはならず、給料等の財産をすぐに差し押さえることはできません。債務名義は先ほど言った様に、『それだけで強制執行が可能になる公文書』ですね。
ですから、きちんと連絡を取っていれば、1日や2日遅れたくらいでは遅延扱いされない場合もあります。また、支払が遅れた理由が『お金が少し足りない』ということであれば、とりあえず現在持っているだけの金額を支払うだけでも、相手に与える印象はだいぶ違ってきます。
今回の給与差押に関しても、債務者がしっかりと支払う意思を債権者に伝えていれば、ここまでに至ることはなかったかもしれません。ですから、下記の記事に書きましたが、
例えばコールセンターを敵に回すのではなく、相談相手だと考える発想を持つことも大事ですね。
最初から債務者が支払いを怠らなければよかっただけだからね!約束はしっかり守らないと、何のための約束なのかわからないからね!
ぴよぴよ(うーむ)!
給料の差し押さえは債務整理によって停止することができる
また、給料の差し押さえは、債務整理によって停止することができます。詳しくは下記の記事に書きました。
ちなみに、債務整理の中でも、給与の差押を中止させることができるのは、
- 個人再生
だけです。任意整理ではできませんので、注意が必要です。
個人再生と自己破産なら、給料の差し押さえを停止させることができるよ!もしそこまで進んでしまっていて、支払いが困難である場合は、検討してみよう!
ぴよぴよ(みよう)!
どーもっ!ものしりニワトリです!この記事に書かれた情報を、補足したり解説するナビゲーターだよ!